落語「特攻セズ」を披露する桂竹丸さん=2日、名古屋市の大須演芸場

 太平洋戦争末期、旧日本軍が決めた全軍特攻を拒み、死を前提としない攻撃を続けた旧海軍航空隊「芙蓉部隊」の指揮官、美濃部正少佐(当時)=1997年に81歳で死去=を題材にした落語「特攻セズ」の上演が4月から始まった。手がけたのは、部隊の基地があった鹿児島県出身の落語家桂竹丸さん(68)。「人々に命の尊厳を知ってもらい、戦争を語り継ぎたい」と思いを口にする。

 「われわれは命を惜しまないが、もっと戦果を上げる方法がある」。2日、名古屋市の大須演芸場で開かれた寄席で、竹丸さんは身ぶり手ぶりを交えながら、美濃部少佐が上官の特攻命令に反論する場面を熱演。約20分の演目を終えると、約50人の観客から惜しみない拍手が送られた。

 幼い頃、母親から戦時中の話を聞かされて育ったことが、戦争に関する落語作りのきっかけだった。多くの特攻隊員が飛び立った旧陸軍知覧飛行場(現鹿児島県南九州市)近くで食堂を営み、隊員から母のように慕われた女性を題材にした創作落語「ホタルの母」を約20年前に作り、上演している。