笑顔を見せる(左から)笹野博司調教師、明星晴大騎手、渡辺竜也騎手

 小雪が舞い始めたが、晴れの舞台に笑顔があふれた。笠松競馬の2024年「騎手等成績優秀者表彰」が行われ、笹野博司調教師(51)と渡辺竜也騎手(24)の師弟コンビをはじめ新人騎手ら厩舎関係者5人と、重賞勝ち競走馬3頭の活躍や貢献がたたえられた。笹野調教師は「渡辺騎手に負けないように」とJRAでの初勝利にも意欲を示し、強力タッグでの飛躍を誓った。

 ■「人馬共にけがが無ければいいなと」

 「優秀調教師」には、自身の笠松歴代最多勝記録を更新して190勝を挙げた笹野調教師が選出され、栄誉を受けた。3年連続、通算6回目の受賞で、9年連続での調教師リーディングの快挙も達成した。全国リーディングは打越勇児調教師(高知)の232勝に続き2位に躍進。勝率は23.6%(連対率40.1%)で全国5位と素晴らしい成績だった。

 昨年11月にはサトノリアンで地方競馬通算1500勝も達成。管理する愛馬ブリスタイムでネクストスター笠松、キャッシュブリッツでオータムカップ、エイシンヌウシペツではサマーカップを制覇。重賞ウイナー3頭を育て上げた。

「渡辺騎手に負けないように」と意欲を語る笹野博司調教師(右から2人目)

 笹野調教師は昨年1年について「渡辺騎手もそうですが、みんなけが無く1年を終えることができました。今年も同じように人馬共にけがが無ければいいなと思います」と安全第一を強調。今年の目標は「渡辺騎手に負けないように、ただそれだけです」と師弟コンビでの躍進に力を込めた。

 ■勝利数全国トップも「狙って当然かなと」

 今年の大きな目標を聞くと「竜也君がJRAで勝ったんで、そういうのを僕も一緒に勝ちたいなあと。あとは(地方で)重賞をどこか勝ちたいです」と高いモチベーション。昨年の勝利数は全国2位。トップにも手が届きそうな位置で「そこも狙って当然かなと。頑張ります」と意欲を示した。近い将来、それも達成してくれそうな勢いが笹野厩舎にある。

 「渡辺騎手に負けないように」という言葉は、JRA勝利や笠松での勝ち鞍などで成長著しいエースジョッキーをたたえ、自らを高めようとする姿勢の表れか。トレーナーとジョッキーという師弟関係を超えて競い合う素晴らしさを感じた。お互い刺激し合いながら、深い絆で一つ一つの目標に進んでいければ好結果につながることだろう。

 ■JRA挑戦、メイプルギン(伊藤強一厩舎)8着後に渡辺騎手初Ⅴ

 渡辺騎手が初勝利を飾ったJRAのレースに、自厩舎の管理馬を出走させるには、2歳時の認定競走勝ちや一定の賞金額が条件となる。笹野厩舎からのJRA挑戦は、これまで40戦して馬券圏内はまだない。2018年以降は2頭を挑戦させただけで、ハードルは高いようだ。

 昨年11月、渡辺騎手は秋風ジュニア勝ちのメイプルギン(伊藤強一厩舎)で京都・1勝クラスに参戦し8着。中央馬のメイプルタピットにも騎乗し、近江特別(2勝クラス)で豪快に差し切ってJRA初Ⅴを決めた。12月にも同じパターンで継続騎乗し、昇級した3勝クラスで4着。メイプルギンとは同じ馬主さんで、今やメイプルタピットの主戦ともいえる存在。また騎乗依頼がありそうだ。

調教師・騎手・厩務員部門の成績優秀者たち

 ■笹野厩舎一丸、さらなる飛躍を

 笠松競馬では6月13日~8月10日に馬場改修のため開催が休止され、今年のレースは8日間ほど減る。このため笹野厩舎としては、弥富移転で遠征が楽になった名古屋競馬への出走も増えるのでは。5年前の馬場改修時(2勝)よりも積極参戦があってもいい。

 現役管理馬は69頭にまで増え、オーナーサイドの期待も大きい。所属は渡辺騎手だけだが、有力馬の預託は多い。これからも笹野厩舎一丸となって、全国リーディングの座や「最優秀勝率調教師賞」も大きな目標にして、全国重賞戦線でのさらなる飛躍を期待したい。

 ■渡辺騎手「お客さんが安心して見ていられる競馬を」

 渡辺騎手は、笠松競馬で勝利を量産しNARグランプリ2024の「最優秀勝率騎手賞」に輝いた。笠松年間最多勝記録を3年連続で更新したほか、騎乗機会8連勝でアンカツさん超え、初の年間200勝突破など記録ラッシュとなった。笠松では615戦232勝、勝率37.7%で3年連続3回目の成績優秀者受賞となった。

 NARグランプリ出席の翌日、川崎・佐々木竹見カップに騎乗し7着、5着で総合8位。その翌日は笠松のレース参戦とフル回転。優秀騎手表彰で、今年のレースでは「お客さんが安心して見ていられる競馬をしたいです」と意欲を示した。

特別表彰で「信頼してもらえる騎手に」と闘志を燃やす明星晴大騎手

 ■明星晴大騎手、特別表彰で「信頼してもらえる騎手に」

 特別表彰(新人騎手)として明星晴大騎手(17)= 後藤佑耶厩舎=が411戦42勝、勝率10.2%と好成績を挙げて1年目から活躍が目立った。

 現在、負傷療養中の明星騎手。攻め馬で右手首を負傷(ひびが入った)したとのことで、今開催はレースに参戦せず。勝負服ではなく、スーツ姿で表彰式のお立ち台へ。けがの具合については「徐々に良くなっていると思います」。間もなくデビューから1年になり「関係者の皆さんから信頼してもらえるような騎手になりたいです」と闘志。最初は緊張気味だったが、笑顔も見せながらファンの声援に応えていた。表彰式後には記念写真の撮影などで盛り上がり、調教タイムから人手不足の中、早期復帰を願う声もあった。

 ■優秀厩務員に2人、小椋さん「馬を無事に走らせたい」

 優秀厩務員には2人。 笹野博司厩舎所属の小椋一八厩務員、伊藤勝好厩舎所属の三谷千尋厩務員(欠席)が受賞。競走馬育成に尽力され、長年の貢献がたたえられた。

 小椋厩務員は優秀者表彰の受賞を聞いて「うれしかったです。これからも馬にけが無く、無事に走らせることができるように頑張っていきたいです」と意欲。強い馬づくりにはパートナーとして欠かせない存在で、今後も愛馬たちの育成に励んでいただきたい。

ストーミーワンダーで園田・姫山菊花賞を制覇し、歓喜に浸る笹野厩舎の3人

 ■ストーミーワンダーでの姫山菊花賞Ⅴはベストレース

 晴れて笹野厩舎の3人が表彰を受けたが、思い出のワンシーンがある。2019年、渡辺騎手がストーミーワンダーで園田の姫山菊花賞を勝った時に、口取り写真で共に手綱を握っていたのが小椋厩務員だった。ナイター競馬でスポットライトを浴びたかのような、笹野調教師らにこやかな3人の姿が印象深かった。

 ストーミーワンダーはカツゲキキトキト(くろゆり賞)に続いて1番人気のタガノゴールドと強豪を次々倒し、全国に笠松の名をとどろかせた。3~4コーナーでの猛スパートは素晴らしく、渡辺騎手にとってもコンビで重賞3連勝を飾るベストレースとなった。

競走馬部門で表彰を受ける成績優秀者たち

 ■最優秀馬に2歳ブリスタイム、3歳キャッシュブリッツ、4歳以上エイシンヌウシペツ

 競走馬部門で表彰を受けたのは、いずれも笹野厩舎の3頭。2歳最優秀馬にブリスタイム(牡・黒鹿毛)、3歳最優秀馬にキャッシュブリッツ(牡・栗毛)、4歳以上最優秀馬にはエイシンヌウシペツ(牝・鹿毛)が選出され、表彰を受けた。

 1年目のブリスタイムは12戦3勝で勝利はいずれも逃げ切り。第2回ネクストスター笠松を制覇した。キャッシュブリッツは17戦5勝。新設の笠松プリンシパルカップ(P)、ブルームカップ(P)に続いてオータムカップ(SPⅡ)を制した。エイシンヌウシペツは37戦10勝。5歳でサマーカップ(SPⅡ)を制覇した。
 
 ブリスタイムの馬主・YGGホースクラブ(代理・笹野調教師)、キャッシュブリッツの馬主・コスモヴューファーム、エイシンヌウシペツの馬主・平井克彦さんがウイナーズサークルで表彰状や記念品を受け「優秀な成績を収められ、その功績が顕著でした」と栄誉がたたえられた。

 ■ファン「馬主さんに自力のある馬を入れてもらって」

 笠松競馬場内でファンの声を聞いた。渡辺騎手に期待すること。「今年は馬場改修もあって笠松、名古屋だけでなく全国の競馬場で乗る機会もあり、いろいろな重賞を取ってもらい『笠松に渡辺あり』というのを響かせてほしいですね」。

 「他の名手のように全国の競馬場で活躍できるといい。将来的には、吉原寛人騎手みたいに重賞の全場制覇も目指してもらいたい。今はアンカツルールがないから、JRAへは簡単に移籍できないし、地方で頑張ってほしい」

JRA交流戦で田口貫太騎手らを見守る笠松競馬のファンたち

 笹野調教師が「竜也君と一緒に中央で勝ちたい」と語っていたことについては「中央でも通用するような馬を笠松でつくることは現状ちょっと難しいかもしれない。でもそこは笹野先生に頑張ってもらい、馬主さんに地力のある馬を入れていただき、笠松からでも中央倒せるんだぞという馬をつくってもらいたいですね」。

 「突然変異というか、オグリキャップのようなこともあるので。ここ笠松はラブミーチャンやライデンリーダ-も生んだ地なんで、頑張ってもらいたいです」

 ■「笠松には、いい騎手がいっぱい」

 「笠松には渡辺騎手や明星騎手ら、いいジョッキーがいっぱいいるから、競馬場としてもパーンと売り出してくれるといいですね。全国の競馬ファンにもっと知ってもらいたいから」

 明星騎手に期待することでは「今はけがをしていますが、(デビュー1年目は)4月から12月まで乗って42勝。今年は減量を取ってもらうぐらいの勢いで、60は勝ってほしいです」

 渡辺騎手の最優秀勝率騎手賞獲得は地元ファンの誇りでもあり、大きな話題となった。場内では「地方騎手で最高の勝率だし、アンカツのようにJRAへ行ってもやれるのでは。試験は難しいが、レースではよく考えて上手に乗っているから、頭もいいのでは」といった声も聞こえてきた。渡辺騎手はこれまで笠松にどっしりと根を張って頑張ってきた。まだ24歳という若さで、今後どんな記録を達成していくのだろうか。

 笠松競馬の所属騎手(期間限定騎手以外)は現在14人。3人が休んでおり、なかなか全員そろうことがない。ベテランの向山牧騎手や高木健騎手らは若手の模範となる騎乗ぶりで存在感を示している。JRA交流戦では田口貫太騎手らの参戦も多く、競馬場に来られないファンにもネット越しから声援を送っていただきたい。


 ☆ファンの声を募集

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 (筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
 
 ☆「オグリの里3熱狂編」も好評発売中

  「1聖地編」「2新風編」に続く第3弾「熱狂編」では、人馬の激闘と場内の熱狂ぶりに迫った。巻頭で「ウマ娘シンデレラグレイ賞のドキドキ感」、続いて「観客大荒れ、八百長騒ぎとなった昭和の事件」を特集。ページ数、カラー写真を大幅に増やした。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、238ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、小栗孝一商店、酒の浪漫亭、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞情報センター出版室などで発売。