
「寂しくなるよ、元気でいてね」。最終12R、ぺ君がパドック周回を終えてラチ沿いに立つと、女性ファンらから別れを惜しむ声が響き、手を振ったり、パチパチと拍手で見送った。ウイナーズサークルで「ふれあい撮影会」も開かれ、詰め掛けた大勢のファンの前で最後の雄姿を披露した。

長年、笠松競馬を支えてきた「職業・誘導馬」のエクスペルテ号(愛称・ぺ君)、ウイニー号の2頭と誘導馬騎手の塚本幸典さん(つかさん)が3月開催を最後に引退。21日には先輩のペ君がラストウオークを迎え、12Rまで計107頭の出走馬を先導。約17年間、笠松の誘導馬として「完歩」のゴールインを果たした。
ぺ君は大先輩ハクリュウボーイ(パクじぃ)の後継馬として2008年に4歳で誘導馬デビュー。この2月に21歳になった。レース開催日には猛暑や悪天候にも耐えて、長距離ウオークで出走馬たちを誘導してきた。塚本さんは自らを「馬人(まじん)つかさん」と称し、パクじぃらを含め5頭の誘導馬と約37年間、笠松競馬場を支えてきた。ぺ君とのコンビでは最後の競走馬誘導となった。笠松競馬本年度最終日の24日にはウイニーとのラストウオークに向かい、塚本さんも誘導馬とともに競馬場に別れを告げる。

■ウイナーズサークルに登場、ぺ君の雄姿
最終12R「春雨賞」をラブアンバジョに騎乗した還暦ジョッキーの高木健騎手が制すると、ファンお目当てのふれあい撮影会が開かれた。西日に照らされて装鞍所から本馬場を歩いてきたぺ君。いつもは重賞勝利騎手らの表彰式が行われるウイナーズサークルに誘導馬が登場。慣れない場所にぺ君はやや嫌がったが、塚本さんに促されて入ると輝きを増し、堂々とした姿を披露した。
撮影タイム、塚本さんはぺ君のたてがみ辺りを優しくポンポンと触れながら、人馬一体でポーズを決めると、カメラやスマホを手にした大勢のファンたちが熱い視線を送った。塚本さんは「もう1頭いますが、どうも皆さん、ありがとうございました」と感謝の思いを伝えると、ファンたちは「かわいい」「ありがとうね、元気でね」と温かい拍手で送り出した。

■「競走馬から誘導馬にして感慨深い。大病をすることもなく誘導を続けられた」
装鞍所に戻ると関係者に迎えられ、塚本さんは「現役の競走馬から誘導馬に調教して、本当に感慨深いです。パクじぃの時は苦労しましたが、ぺ君は結構早いうちに手の内に入ったので、いろいろなことを教えることは楽でした。特に大病をすることもなく、この年まで誘導を続けられたのは、この子が本当に健康だったからでありがたいことです」と共に歩んだ相棒の頑張りを「ヨイヨイ、ハイハイ」と声を掛けながらねぎらっていた。

■猛暑での長距離ウオークにも耐えて競馬場運営を支えてきた
全国一とみられる過酷な誘導馬業務をこなしてきたぺ君とウイニー君。
笠松競馬場は国内唯一の「内馬場パドック」で、地方競馬の他場やJRAの競馬場とは違って特殊な誘導馬業務。1コーナー奥にある装鞍所から約400メートル離れたパドックまで出走馬を先導。コースを横切って馬道を通り抜け、ゴール板を過ぎてパドックに到着する。

競走馬を引き連れて先頭を歩くことで各馬に安心感を与え、入れ込み気味の馬も落ち着かせる「守護神」のような存在だった。パドックでも出走馬同様にフルに周回し、1日15キロ前後の長距離ウオーク。特に夏場は猛暑が長引き、ハードな仕事を続けてきた。2年ほど前から、健康面が考慮され誘導馬のパドック周回は2周ほどにはなった。
ジョッキーたちが到着し各馬に騎乗すると、ぺ君は本馬場に入り、ラチ沿いで返し馬に向かう各馬を優しく見送った。その姿は、熱い視線を送るファンたちのシャッターチャンスとなった。馬と人との距離が非常に近い笠松競馬場の風物詩でもあった。

■誘導馬写真展でぺ君、ウイニー&つかさんへ多くのファンたちが感謝の気持ち
場内のオグリキャップ像近くでは誘導馬写真展も24日まで(土日も)開かれている。ファン公募による2018~21年誘導馬カレンダー写真を制作した「ホース・ファクトリー」が出展。オグリの里も協力し、岐阜新聞記事や競馬コラムで掲載した写真を展示した。メッセージボードも用意され、アイドルホースでもあったぺ君、ウイニー君とつかさんへの「贈る言葉」として、多くのファンたちが感謝の気持ちを寄せた。
ファンの心を癒やしてくれた人馬への思いがイラスト付きなどでぎっしりと。来場できなかった笠松競馬、誘導馬ファンたちと思いを共有するため、当欄でメッセージを一挙公開する。

■「大好きで何回も会いに来られて幸せでした」
「会えてうれしかったです。これからも元気で!」
「長い間おつかれさまでした。外でお散歩しているのに出会えた時は、本当にうれしかったです。どうかこれからも幸せに暮してください。大好きです(さなより)」
「応援してました。ごくろうさまでした(高知競馬ファンより)」
「また会える~」「おつかれさま。元気でゆっくり 気をつけて!」
「みなと公園でウイニー君に初めて会って競馬に興味をもちました。大好きで何回も会いに来られて幸せでした。長い間おつかれさまでした。ありがとう!」
「昨年12月31日、初めてつかさん&ウイニーくんを見て、また本日(3月20日)見にきました。寂しくなりますが、今回も見られて良かったです。長い間、ウイニー君、ぺ君、つかさんお疲れさまでした。これからも皆元気で!(富山からの競馬ファンより)」
「初めて好きになったお馬さんがぺ君とウイニー君でした。ありがとう。また会いに行きます!」
「つかさん、ぺ君、ウイニー君 長い間本当に本当におつかれさまでした。パクじぃが元気な頃から応援してました。たくさんの癒やしをもらって感謝でいっぱいです。パドックで触れ合えたこと、本当にうれしかったです。御す方にこれから競馬場でお会いできないことが本当に寂しく思います。どうかどうかこれからも元気でずーっとずーっと幸せに暮らしてください。本当にありがとう。大好きです」

■「笠松の名物がいなくなってしまうのはとても寂しいです」
「つかさん、ウイニー君、ペ君 長い間、お疲れさまでした。かわいい2頭目当てでよく競馬場に来ていました。寂しくなりますが、2頭の健康をお祈りしています。(きらら)
「長い間、お疲れさまでした! これからもSTAY HEALTHY」
「つかさん、ぺ君、ウイニー君 長い間お疲れさまでした! 笠松の名物がいなくなってしまうのはとても寂しいです。皆さんお元気でお過ごしください」
「おつかれさまでした。ありがとう。ウイニーちゃんとぺ君にいやされていました。会えなくなるのは寂しいけど、ゆっくりこれから過ごしてください。つかさんもおつかれさまでした」

■「つかさん、写真を撮りやすいようにしてくださって。2頭は宝物です」
「つかさん、馬たちの世話、本当にありがとうございました。どうぞ、ゆっくりとなさってください」
「長い間お疲れさまでした。つかさん、バックヤードツアーやSNSでのコメント、とてもうれしかったです。写真を撮りやすいようにしてくださったりと、本当に感謝しかなくて…。エクスペルテ、ウイニー君 本当にありがとう。2頭を撮れたこと、本当に宝物です。本当にありがとう。これからも皆さんの応援させてください」
「ありがとうございました(Y.k)」
「つかさん、ぺ君、ウイニー君 長年のお仕事お疲れさまでした。お体に気を付けて元気で長生きしてくださいね」
「パドックの名手、名馬です!おつかれさまでした!」
「今までおつかれさまでした。そしてありがとう! 笠松に来て会えるのが楽しみでした。これからも元気にすごしてください」

■「存廃問題があった頃、新聞紙面に明るい話題を届けていた」
「笠松競馬の存廃問題があった頃、新聞紙面に唯一、笠松の明るい話題を届けていたのが塚本さんとハクリュウボーイ、エクスペルテ、ウイニーたちでした。これまでのご活躍に心より敬意を表します。ありがとうございました。お疲れさまでした(尾関)」
「塚本さん、ウイニーさん、エクスペルテさん お疲れさまでした。そしてありがとうございました。いつもおしゃれな皆さんが大好きでした。またどこかで会いたいです」
「つかさん、ウイニー君、ぺ君お疲れさまでした。ウイニー君、ぺ君にはたくさん、たくさん癒やされました。もう活躍する姿が見られなくなるのは残念ですが、これからの馬生に幸せがきますように。つかさんもありがとうございました。1人と2頭の思い出はずっと心の中に…。(ろろより)」
「つかさん、ペルテ君、ウイニー君 お疲れさまでした。もうこちらで会えないのは残念ですが、たくさんの思い出は忘れません。本当にありがとうございました。(由香)
「ウイニー君、エクスペルテ君、つかさん競馬楽しめたよ、また会おう!」

■「心癒やされ、僕の天使です。ありがとう」
「いつも馬たちを先導している姿を見て心癒やされました。つかさん、カメラを向けて待っていたら、ゆっくりこっちに馬を引っ張ってくれてありがとうございました。ペルテ君、ウイニー君。君たちは僕の天使です。ありがとう。ゆっくり余生を楽しんでいつまでもお元気で」
「おつかれさまでした。とってもかわいい姿に癒やされました。この先もどうかお元気にお過ごしください!」
「つかさん、エクスペルテ君、ウイニー君、ハクリュウボーイさん。長い間、暑い日も寒い日もありがとうございました。おつかれさまでした。たくさんの誘導ありがとう。安心して競走馬たちも歩けたと思います。たくさんの思い出ありがとう。おつかれさまでした(hiro)」

■「競走馬たちの心を落ち着かせ、私たちの心をも癒やし続けてくれた」
「笠松競馬場に来た時、一番の楽しみが誘導馬さんをめでることでした。癒やしと馬のかわいさも教えてくれてありがとう! いつまでも健やかに!つかさん、ペ君、ウイニー君
長い間本当にお疲れさまでした!」
「つかさん、ウイニー、エクスペルテ いつも出走馬たちを見守ってくれてありがとう。これからもお元気でお過ごしください。お疲れさまでした(名古屋 K)
「荒ぶった競走馬たちの心を落ち着かせるのみならず、厳しい今の時代を生きる私たちの心をも癒やし続けてくれました。本当にありがとう。そしてお疲れさまでした」
「ウイニー号 エクスペルテ号 暑い日も寒い日もレースに出走するお馬さんを誘導してくれてありがとう。2頭のかわいい誘導はいつもいやされていました。ハルオーブをありがとう。感謝じゃん」(次回につづく)
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
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