YJSファイナルラウンド園田の紹介式であいさつする長江慶悟騎手(中央)

 ヤングジョッキーの全国ナンバーワンは誰だ。4年前、デビュー3日目のレース直前に落馬し、大けがを負った笠松競馬の長江慶悟騎手(25)が、笠松勢では渡辺竜也騎手以来6年ぶりとなるファイナリストの座を自らゲット。ファンも「JRAのレースにも乗れるなんて。ワクワク、ドキドキが止まらない」と輝きを放ちながら頑張る姿に熱いエールを送っている。
 
 地方、JRA若手騎手の最終決戦「2024ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)」のファイナルラウンド園田(12日)は若いエネルギーが熱く燃えた。長江騎手は第1戦(6R)6番人気のニシノオールマイトで3着、第2戦(8R)は10番人気のトゥームレイダーで7着。人気以上の着順で健闘し、計21ポイントで総合7位につけた。ファイナル最終日の14日は中京競馬場(芝、ダート)に舞台を移し、王者が決定する。

笠松競馬場での壮行セレモニーでファンらの激励を受けた長江騎手

 ■壮行セレモニー「優勝を目指して頑張りたい」

 トライアルを突破した東西の16人(地方、JRA各8人)がファイナル参戦。1人2レースずつ乗り計3レースで競った。波乱を期待したが、くじ運の良かったジョッキーが上位に入線。いずれも1番人気が勝ち、堅い決着となった。

 前日、笠松競馬場で開かれた「長江騎手YJSファイナル壮行セレモニー」では「ここまで来たので、優勝を目指して頑張りたい」と意欲。園田での紹介式でも「ファイナルラウンドで全部勝つように頑張ります」と闘志満々。ここまで言い切るのは長江騎手だけで、高い目標にチャレンジする気迫が感じられた。

 長江騎手は2023YJSのポスターでは「センター」を務めたが予選落ちし、1年遅れでの大ブレーク。出場した若手の最年長にもなり、ラストチャンスの今年に懸ける思いは強く、ポジティブな発言も増えてきた。

第1戦、本馬場入りに向かう長江騎手

 ■ファン「すごく成長している」

 YJSは2017年に新設され、笠松勢のファイナリストは渡辺騎手だけ。中山の芝で2着、3着もあったが総合では8位と9位だった。一連の不祥事もあってレース自粛となった21年、笠松勢は長江騎手、東川慎騎手、深沢杏花騎手が事件の余波をかぶり、YJSに参戦できない厳しい年もあった。

 笠松グランプリシリーズで長江騎手は初日から2勝、3勝を挙げて「地方競馬通算100勝」まであと1勝に迫った。この時点で開催リーディングに立ち、ファンからは「けがや開催自粛を乗り切ってすごく成長しているし、中京でも一生懸命乗ってくれたらいい。佐々木朗希投手に似ており、笠松競馬を盛り上げてくれているし、飛躍を期待。YJSでは渡辺騎手を上回るような成績を」と激励。横断幕も掲げられており、応援団の存在は大きな力になっている。

 名古屋からはルーキーの望月洵輝騎手も参戦。1年目、4月デビューでもう85勝(うち笠松で12勝)と大活躍。「笠松でも乗れているし、YJSは今年が最後になりそう」とファンも東海勢2人の頑張りを期待。望月騎手は紹介式で「楽しみにしていました。自分のベストを尽くします」と意欲を示した。 

第1戦、大井の鷹見陸騎手が差を広げてゴールイン。2着に及川烈騎手、3着に長江騎手

 ■第1戦3着「じっとしていられなく勝負に出た」

 笠松は騎手不足で、未明から1人20~30頭の調教を担当する。YJS当日も長江騎手は前夜11時半に起きて、0時すぎから6時半まで攻め馬に励んだ。車で移動し10時40分には園田入りした。

 笠松とYJSの開催前には地元の神社で「いい結果を残し、けがをせず無事に終われますように」と拝んできたという。100勝ラインは「1開催3勝ずつで年内に達成できればと思っていましたが、2日で5勝できた。神社でお参りしたのが良かったかも。YJSでもいい結果を笠松に持って帰るようにしたい」と闘志を燃やしていた。

3着で厩務員らの出迎えを受ける長江騎手

 初騎乗の園田コース。第1戦は「中団から」と6番手につけて3コーナーから押し上げ、4コーナーでは3番手に。鷹見陸騎手が逃げ、及川烈騎手が2番手に上がって前3頭の競馬に。最後の直線では脚色が同じになり、そのままゴールインした。

 ファイナル初戦が3着なら好スタートといえる。検量室前に戻ってきた長江騎手は「先行争いが激しくなるので、後ろからまくろうと。及川騎手が上がってきたので、じっとしていられなく勝負に出た。最後は脚が上がちゃって。2着は欲しかったが、馬は頑張ってくれたんで3着なら十分です」と笑顔を浮かべた。  

8R、1周目のゴール前で望月洵輝騎手(左)と長江騎手(中央)

 ■第2戦7着、インから伸びたが掲示板に届かず

 第2戦は1870メートル。道中は一団となってスローペースで、長江騎手は2周目最後方になった。「最後のひと脚に懸けたい。はまらなかったら仕方がない」と末脚勝負。ゴール手前ではインからいい脚で伸びてはきたが上位に届かず、7着が精いっぱい。

 最低人気馬への騎乗で、目標は「掲示板」だったが残念。調教師さんからは「しんどかったな。初めての距離で」と声を掛けられた長江騎手。装鞍所騎乗で「返し馬でも引っ掛かったし、前へ行きたがった。なだめながら後ろからの競馬に」。やはり距離が伸びて厳しい戦いになった。

第2戦を勝った岐阜県出身の土方颯太騎手

 笠松勢としては2人目のYJSファイナリストでファンや関係者の期待も大きい。本人は「ファイナルでもいつもと変わりなく、トライアルと同じ感じで乗ればいいかな」。中京では芝コースにもチャレンジ。「あまり前には行きたくない。左回りでコーナーが緩い分、いいのかなあ」と広いコースに期待も膨らませていた。

紹介式で闘志を燃やす出場騎手たち

 ■総合トップは1着、2着の大井・鷹見陸騎手

 ファイナルラウンド初日を終えて、トップは1着、2着で50ポイントを稼いだ大井の鷹見陸騎手(21)。2位は8R1着の兵庫(岐阜県出身)土方颯太騎手(17)、3位は8R1着のJRA・長浜鴻緒騎手(19)。笠松、名古屋での期間限定騎乗もある及川烈騎手(浦和)は2着、9着で6位、室陽一朗騎手は7着、4着で10位。

第2戦の返し馬に向かう田口貫太騎手

 昨年のYJSファイナル準優勝で、今年は優勝を目指していた田口貫太騎手はともに中団から伸びを欠いて6着、8着で13位、愛知の望月洵輝騎手も見せ場をつくれず9着2回で14位と出遅れた。                   

10Rの騎乗を終えた望月騎手

 ■ショータイム「佐々木朗希投手のそっくりさん」

 ここからはショータイム。長江騎手は昨春、プロ野球・ロッテの「佐々木朗希投手のそっくりさん」として「大谷翔平選手似」の出演者らとテレビ番組で競演。笠松競馬秋まつりでもステージなどで大活躍。佐々木投手はメジャー挑戦が決まり、長江騎手とのツーショットは残念ながら実現しておらず、望み薄となってきた。

「佐々木朗希投手のそっくりさん」としても注目を浴びる長江騎手

 園田でのレース後の取材では、ジャパンのユニホーム姿に着替えはしなかったが、恒例となってきた「佐々木朗希モード」のそっくりさんトークで大盛り上がり。「メジャー20球団から、お誘いがすごく来ているんですよね。最後はお金ですかね」「中京では160キロで飛ばしたい」と快速球をビュンビュン投げ込み、「メジャーでの佐々木投手の所属が決まったら、ユニホームを買いたいです」とも。長江騎手自身も今後、国内で「メジャー」になれるような活躍を、本業の競馬で見せていきたいものだ。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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