
YJS騎手紹介式で(左から)笠松の明星晴大騎手、長江慶悟騎手、金沢の加藤翔馬騎手
JRA2年目の田口貫太騎手(栗東)が2連勝、地元・笠松期待の長江慶悟騎手は第2戦2着で、ともにファイナルラウンド進出へ大きく前進した。
「ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)」の西日本地区トライアルラウンド笠松が11日、秋晴れの笠松競馬場で開催された。17~24歳の若手ジョッキー11人が参戦。「未来の主人公がここにいる」と騎手紹介式がゴール前で行われ、「貫太、頑張れよー」などとファンの声援が飛んだ。
■紹介式で秘めた闘志に点火
地元・岐南町出身の田口騎手は「笠松で育ち、フランスで経験を積み、昨年総合2位(ファイナル)のリベンジは古里から始まる」と、明星晴大騎手は「笠松競馬場で成長を続けるルーキー。スターへの階段を上る先に輝く一等星」と、長江騎手は「ファイナルラウンドはもう目前。全力投球の騎乗で笠松のエースになる」と実況の西田茂弘アナに紹介された。記念撮影も行われ、秘めた闘志に点火。笠松は初めてというジョッキーも多くいたが、手にした花束をファンにプレゼントし交流を深めた。

7R、パッドゥラパンに騎乗し1着でゴールする田口貫太騎手
■7R、田口騎手が抜け出し1着
レースは2戦。若いエネルギーが爆発し、ファイナルラウンド進出を目指して熱戦が繰り広げられた。
第1戦の7R、1番人気の芦毛馬パッドゥラパン(牝6歳、川嶋弘吉厩舎)に田口騎手が騎乗。3番手から抜け出すと、スタンドから歓声が湧き起こり、1着ゴール。半馬身差で追い上げた金沢の加藤翔馬騎手が2着。逃げた鷲頭虎太騎手(栗東)が3着で続いた。勝ち馬は前走まで長江騎手が騎乗していた馬で、田口騎手が好騎乗を見せた。
長江騎手はYJS名古屋で勝利を挙げ、高知では5着もあり、好調をキープ。総合44ポイントで西日本地方騎手の総合2位につけていた。レース前は「無難に乗って、けがなく回ってきます。その馬の持ち味を引き出し、負けたら仕方がない。頑張って騎乗しますよ」と意欲を示した。2レースとも専門紙の印は上々。「今年がラストチャンスになりそうな長江騎手にはぜひファイナルへ」とファンの期待も膨らんだ。

7Rでエクローサに騎乗し、返し馬を行う長江騎手
■長江騎手は後方のまま9着
ところが7Rは初騎乗の地元馬で苦戦。6番人気のエクローサで後方待機策から、4コーナーで6番手に上がるのが精いっぱい。最後は馬群に沈んで9着に終わった。
ブービーで2ポイントしか稼げず、レース後は「自信はなくなってきたが、次は頑張ります。ゲートを出たら行っちゃいたい」とハナ切り宣言。積極策でもう前に行くしかないと闘志を燃やした。
■9Rも田口騎手差し切り連勝、逃げた長江騎手2着
迎えた9R。長江騎手は1枠から5番人気のミトノシャルマン(笹野博司厩舎)に騎乗。調教で乗ったこともあり、夏負け解消でリフレッシュ。3カ月ぶりのレースで力を出してくれた。

ゼンダンクラージュに騎乗し連勝を飾った田口騎手(右)と2着の長江騎手
スタートダッシュを決めると作戦通りスイスイと快調な逃げ。3~4コーナーでも後続を3馬身差ほど離し「これは上位入線間違いなし」と手応え。追ってきたのは田口騎手のゼンダンクラージュ(セン馬5歳、柴田高明厩舎)。ラスト100を切って鋭い切れ味を発揮。マッチレースの様相となり、ゴール寸前、田口騎手がきっちりと差し切って笠松ラウンド2連勝を決めた。
半馬身差、長江騎手が2着。河原田菜々騎手(栗東)は岐阜金賞勝ちがある実績馬のダルマワンサ(田口輝彦厩舎)で3着に突っ込んだ。
■長江騎手、西日本地方騎手の総合トップ
長江騎手は2着の20ポイントを加算し、総合64ポイント。西日本・地方騎手の総合トップに立った。

9R、1周目先頭に立った長江騎手。2着でファイナルラウンド進出へ大きく前進した
先行有利の馬場状態で「ハナは強いが、もまれたら駄目だと。道中のペースは速く、もうちょっと引き付けて行けば良かったと反省もあります」。3コーナーでは一気に引き離して「あんまり追わずに、ハミを掛けて我慢して直線を迎えた方がいいと聞いていて」と逃げ切りを狙った。
4コーナーを回って「これはいけたかなあと思いましたが」。後ろから田口騎手の馬が来た時には「脚色が違っていたので、失敗したなと」。ゴールの瞬間は「差されたと分かった。悔しいと思いつつ、反省点が大きいなと。1戦目は内容的に駄目でしたし、2戦目も勝っていればと。まだまだ甘かったです」
総合ポイント争いでは、高知で5着、8着と伸び悩んだがトップを奪い返し「十分過ぎるポイントを取れたかなと。1位になって、そこは素直にうれしいです」。トライアル最終ラウンド金沢の結果待ちになるが、2位には16ポイント差をつけており、長江騎手にとって初めてとなるファイナル進出は濃厚となった。初戦の名古屋を勝って30ポイント獲得は「だいぶでかいです」と好スタートを切ったことが好結果につながった。

コスプレタイム、佐々木朗希投手そっくりさんの長江騎手はユニホーム姿も披露した
■「コスプレタイム」突入、背番号17のユニホーム姿
ここからは恒例にもなった「コスプレタイム」に突入。「高知でのレース後、指示が出てました」とコーチ役にプレゼントされていたもう1着の勝負服「背番号17のユニホーム」姿に変身。プロ野球・ロッテの佐々木朗希投手そっくりの長江騎手。昨秋の笠松競馬秋まつりでは、大谷翔平選手のそっくりさんとも共演しており、おなじみの姿でもある。
「金沢が終わるまでは安心できないですが、出場が決まったら、ファイナルでも全力で結果を出して優勝を目指して頑張りたい。本音を言えば、金沢ではJRAの騎手に頑張ってほしい思いはあるが、地方の騎手が勝ってもそれは結果なんで。僕は見ているだけです」と。10月29日の金沢ラウンドで、総合成績上位の8人(地方、JRA各4人)が12月12日・園田、14日・中京でのファイナルラウンドに進出できる。
長江騎手がファイナル進出が決まれば、笠松では2017、18年の渡辺騎手以来2人目となる。

ファンの前で紹介式が行われ、闘志を燃やす地方、JRAの若手ジョッキーたち
■加藤翔馬騎手(金沢)3位、河原田菜々騎手(JRA)2位
☆YJS西日本の地方騎手ランキング(P=ポイント)
①長江慶悟(笠松)64P②高橋愛叶(兵庫)48P③加藤翔馬(金沢)46P④長尾翼玖(兵庫)44P⑤望月洵輝(愛知)42P⑥中山蓮王(佐賀)41P⑦大畑慧悟(愛知)39P⑧合林海斗(佐賀)39P⑨新庄海誠(兵庫)38P⑩山本屋太三(兵庫)23P
⑪土方颯太(兵庫)20P⑫塩津璃菜(兵庫)17P⑬阿部基嗣(高知)16P⑭明星晴大(笠松)12P⑮青海大樹(佐賀)5P⑯城野慈尚2P
※笠松の松本一心騎手は負傷療養中で騎乗なし。
☆JRA騎手上位ランキング
①橋木太希80P②河原田菜々65P③田口貫太60P④鷲頭虎太47P⑤吉村誠之助45P

YJSで連勝を飾り、表彰式は貫太スマイル全開のワンマンショーとなった(NAR提供)
■表彰式ワンマンショー、貫太スマイル全開
レース後の表彰セレモニーは、第1戦と第2戦を制した田口貫太騎手のワンマンショーになった。
大きな拍手と声援に迎えられ、勝利騎手インタビューでは「地元ということもあって、二つ勝てて良かったなと思います」。昨年も勝っており、2年連続のお立ち台。「笠松では良い競馬をさせていただいているので、良いイメージで乗ることができました」

7Rを勝った川嶋弘吉厩舎のパッドトゥラパンと田口騎手ら
第1戦「最後はしんどかったので、頑張ってくれと思いながら乗っていた」。第2戦は「自分が2番手でかわいがりすぎていたので届くかなと心配したんですが、馬が強かったです」。金沢ラウンドでの騎乗もあり「昨年はファイナルで2位だったので今年は1位を取りたいと。まずはファイナルに行けるように金沢でも頑張ります」。
ファンには「笠松に来た時にいつも応援していただきありがとうございます。すごく励みになっていて、もっともっと頑張ります」と熱い応援に感謝した。
■「すごいねえ」笠松での勝率53%
騎手控室では、親しい厩務員さんに「よくやった」と丸刈り頭をなでられ続けてご機嫌の貫太君。笠松競馬場は「ホーム」と自覚しており、第1戦勝利後にも「地元で毎回勝たせてもらっており、幸先良いスタートが切れました」とにこやかだった。
第2戦では長江騎手と一騎打ちに持ち込んだ。「相手が飛ばしていて、4コーナーでも止まらないなと。最後ぎりぎりでしたが、馬が頑張ってくれた。何とか届いて良かった。金沢では現在80ポイントの橋木君を抜かしたい」と闘志満々だった。

9Rを勝った柴田高明厩舎のゼンダンクラージュと田口騎手ら
連勝の田口騎手に「すごいねえ」と声を掛けると「二つとも勝てるとは思っていなかったんで。(9Rでは)お父さんの厩舎の馬(ダルマワンサ)が1番人気だったんで負けるかもしれないと思っていましたが」と。騎乗した河原田菜々騎手は「私が出遅れて終わりました」と苦笑い。田口騎手も「内から見たら、あー出遅れたな」と分かったそうで、2番手から勝利につなげた。
笠松では今年7勝目と好相性。勝率も53%。あまりの強さに「笠松でリーディング取っちゃうんじゃないの」と冗談ぽく聞くと、「いや、笠松には絶対王者の竜也さんがいるので、まだまだ及ばないんで」と話に乗ってきてくれた。「渡辺騎手とはどこかのジョッキー戦で対決してほしいね」と聞くと「園田でやっているようなレース(ゴールデンJC)に、将来出場できるよう、一緒に頑張っていきたいです」と意欲を見せた。
金沢から参戦した加藤翔馬騎手は総合3位につけた。7Rのみの騎乗で、8番人気馬で2着に突っ込み「自分の理想としていた競馬はできた」。20ポイントを加算し「でかいですね。あとは金沢で決められれば。ラストチャンスをつかみたい」と地元での活躍を誓った。

笑顔でツーショットの兵庫・塩津璃菜騎手(左)とJRA・古川奈穂騎手
■女性3人参戦、河原田騎手はダルマワンサで3着
女性ジョッキーは3人が参戦。JRAの古川奈穂騎手は「笠松競馬場は初めてです。コースの特徴などを深沢杏花騎手に教えていただき、ロスなく回ってこようと。頑張って食らいついていければ」と闘志。2戦とも中団から4着に入り「馬券に絡めるよう頑張りましたが、期待に応えられず悔しい結果でした。ファイナルに行ったことがないですが、まだ金沢があるので」と意欲を見せた。現在24ポイントで12位だが、チャンスは十分。田口騎手とともに金沢ラウンドでファイナリストを目指す。
河原田菜々騎手は田口騎手と同期。「出遅れてしまい、前残りの馬場で砂が深い内を突いて一生懸命走ってくれました。3着でしたが、馬のおかげでポイントを稼げたんで、感謝したいです」。1番人気のダルマワンサで後方2番手からの競馬になったが、最後は上がり(3F)最速で追い上げた。佐賀では勝利を挙げており、総合2位とファイナル進出圏内だ。
ルーキーの塩津璃菜騎手は、6人いる兵庫勢のうちただ一人笠松に参戦してくれた。話好きのようで、明るいキャラクターは好印象。第1戦は10番人気馬で前めにつけて5着を確保した。「逃げ馬で着には入れましたが、最後の直線で内にささってしまい、まだまだ甘いかなと」。また「古川騎手と仲良くなりたい」とリクエストでツーショット撮影。好きな食べ物を聞かれ「インドカレーです」と答えてにっこり。チャンスがあれば、また笠松で騎乗できるといい。

地元開催のYJSで、ほろ苦いデビューとなった明星晴大騎手
■ルーキー明星騎手はほろ苦いデビュー
明星騎手は初めてのYJS挑戦はほろ苦いデビューとなった。前半の3、5Rで勝利を挙げており好ムード。7Rでは「この調子でYJSでも、番手から見せ場をつくり、勝てるよう頑張ります」と2番人気・トーホウグロリアスで先行策を狙ったが、中団から後退し、しんがり負け。「次で頑張ります」と挑んだ9Rも後方のまま9着に終わり結果を残せなかった。
「9Rは出遅れちゃいました。何にも残すことができず悔しいです」ときつい洗礼を受けたが、JRAの騎手らと戦い大きな経験になり「来年頑張ります」と前を向いた。

中学時代に野球部員だった長江騎手は佐々木朗希投手、明星騎手は大谷翔平選手を意識したポーズを披露
■元野球部員、投打でツーショット
ヤングジョッキーズ笠松ラウンド恒例となった「2着目の勝負服タイム」では、明星騎手も呼ばれてツーショット。長江騎手が佐々木朗希投手の投球フォームを披露。明星騎手は大谷翔平選手を意識した?バッティングフォームで対抗。中学時代は野球部員だった2人。後藤佑耶厩舎の先輩と後輩で息の合ったコンビぶりで報道陣らの注目を浴びた。

完全試合達成で、センター方向を振り返って歓喜に浸った佐々木投手のパフォーマンスを夕日に向かって披露する長江騎手
長江騎手は、バックスクリーンに向かって両手を広げた佐々木投手「パーフェクトゲーム」達成のパフォーマンスも夕日を浴びながら披露。YJSファイナリストに決まれば、中京の芝コースにもチャレンジできる。プロ野球は12日からクライマックスシリーズが始まり、佐々木投手が先発予定。ロッテは「下克上」で日本シリーズを制覇したこともあり、先発陣の出来が明暗を分けそうだ。
テレビのそっくりショー出演経験もある長江騎手は、佐々木投手とのツーショット写真の撮影やバンテリンドームなどでの始球式登板も期待されている。長江騎手と明星騎手は12日の笠松競馬秋まつりのステージイベントでは「ヤングジョッキー紹介」のステージにも登場する。
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「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。
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