柏原正樹・京都大特任教授。日本人として初めてアーベル賞の受賞が決まった(Peter Badge/Typos1/The Abel Prize提供)

 ノルウェー科学文学アカデミーは26日、優れた業績を上げた数学者に贈るアーベル賞を、京都大数理解析研究所の柏原正樹特任教授(78)に授与すると発表した。代数解析学の基礎となる新たな理論を確立したことなどが評価された。アーベル賞は「数学のノーベル賞」ともいわれ、若手数学者に贈られるフィールズ賞と並ぶ偉業。2003年の最初の授与以来、日本人が選ばれるのは初めて。

 アカデミーは柏原氏を「誰も想像しなかった方法で驚くべき定理を証明してきた。まさに真の数学的な先見者だ」とたたえた。26日公開の動画では、授賞を伝えられた柏原氏が「全く想像していなかった。とても驚いた」と繰り返し「光栄です。かみしめたい」と笑顔で話した。

 柏原氏は1947年、茨城県生まれ。東京大に進み、70年の修士論文で代数解析学の「D加群」と呼ばれる理論を打ち立てた。論文は日本語だったが世界的に注目され、代数解析学などの分野に大きな影響を与えた。名古屋大助教授などを経て84年、京都大数理解析研究所教授になった。