東京電力福島第1原発事故で豊かな自然に囲まれた生活が困難になったとして、福島県田村市内への移住者らが東電と国に損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁は26日、東電に対し、うち16人に計約1千万円を支払うよう命じた。移住生活の財産的損害をほぼ認めず、一審東京地裁判決が認めた約6500万円から大幅に減額した。国への請求については、棄却した一審判決を支持した。

 中村也寸志裁判長は、田村市内を生活の本拠地としていた移住者らについて、精神的損害を認めた。一方で、自然との共生生活のため取得した不動産に関しては、そうした生活に移住者らが価値を見いだしていたとしても「不動産自体の価値とは言えない」とし、財産的損害をほぼ認めなかった。一審判決は不動産の利用が制限されたことで損害を受けたと認め、49人に賠償するよう命じていた。

 判決などによると、移住者らは事故前、田村市内に土地や自宅、別荘を購入。事故後、国は移住者らの居住地域を含め一帯を「緊急時避難準備区域」に指定したが、2011年9月に指定が解除された。