マイナンバーカードに搭載されているICチップの空き領域を使って、一部の自治体が独自の住民向けサービスを展開している。選挙時の投票所入場受け付けや、タクシー運賃の割り引き、見守りサービスなど幅広い。行政のデジタル化とカードの普及促進が狙いだ。岐阜県内では、美濃市が病院の診察券機能を付与し、患者の利便性向上や手続きの簡素化に取り組む。
「岐阜新聞デジタル クーポン」始めました!対象店舗はこちら美濃市は、昨年3月から市立美濃病院の診察券として活用。「マイナ保険証」への移行に伴い、患者からは「1枚あればいいので忘れ物がない」といった声も出ているという。カードを機械にかざすと受け付けができ、窓口手続きの簡素化にもつながる。
診察券登録は、病院窓口で1分ほどで完了する。これまでの登録者は約230人。普及率は5~7%にとどまるが、市は「健康保険証や運転免許証の機能が定着すれば普及率も上がるのではないか」と期待する。
新潟県三条市は、選挙の投票入場受け付けに活用。期日前投票では宣誓書の提出や入場券が不要となり、担当者は「行列が解消され、職員の事務負担も減った」と話す。災害時に開設する避難所の入退所の管理などにもカードを使う。
島根県美郷町は昨年4月、高齢者らが公民館を訪れた時や小中学生の登校時、カードを専用端末にかざすことで家族に通知する見守りサービスを開始。健康増進に取り組む高齢者らに地元の買い物に使える独自のポイントを付け、カード利用につなげている。
前橋市では、タクシー乗車時に車内端末にタッチすると市の運賃補助が適用され、2023年度は約1万人が利用した。富山県立山町は、駅一体型の複合施設にカードで解錠できるロッカーを設置。ホームページで図書館の本を予約すると閉館時でも受け取れる。
ただ、独自サービスを受けるには住民が利用申請し、自治体庁舎でカードにデータを書き込む手続きが必要になるなどハードルも高い。地方公共団体情報システム機構によると、導入は全国で約50自治体となっている。