東日本大震災の津波で宮城県石巻市立大川小の児童74人が犠牲となり、学校側が事前に適切な避難場所や経路を定めず、市教育委員会も不備を是正しなかった組織的過失を認定した仙台高裁判決の確定から5年余りが過ぎた。学校現場に高度な事前防災を求めた判決を受け、県教委は学校からの相談を受ける窓口を設置し、必要に応じて防災の専門家を派遣している。
学校を訪れるのは東北大教授を中心とする学校防災アドバイザー。危機管理マニュアルの作成や避難訓練の方法にを助言する。県立学校が支援対象だが、市町村立学校からの依頼にも応じる。
敷地の一部が土砂災害警戒区域になっている県立名取支援学校は2024年度に初めて制度を利用した。土砂崩れが起きた場合、同校では校舎上階に「垂直避難」することにしている。マニュアルの改定に際し、校外への再避難を新たに盛り込むべきかの議論が行き詰まっていた。
専門家は垂直避難して校舎にとどまるべきだとの見方を示し、海野善和教頭は「今のマニュアルで児童生徒の安全を守れるかという不安を解消できた」と話した。