マンモグラフィー検査で撮影した画像。矢印部分が乳がん

乳腺外科医 長尾育子さん

 今年の初夏は、例年に比べて30度以上の夏日が多く、降水量も多いのだそうです。気温や気圧の変化は自律神経に影響を及ぼすため、日頃から更年期様の症状に悩まされている方や乳がんのホルモン療法中の方にとってつらい季節であったかもしれません。女性のホットフラッシュ(のぼせ)は暑い夏に増加するともいわれていますので、体と心を整えて、暑い夏に備えたいものです。

 さて、6月といえば、岐阜県内の多くの市町村では対策型の検診の申し込みが開始されています。乳がん検診は40歳以上の女性が対象で、マンモグラフィー検査が基本となっています。マンモグラフィーとは、乳房専用のレントゲン検査のことで、左右の乳房それぞれを圧迫板で挟んで上下方向と側面方向から撮影するため、「乳房が痛いのではないか?」と心配されている方もあるでしょう。

 なぜ、乳房を圧迫する必要があるのでしょうか? 厚みのある乳房の中に隠れている小さな乳がんを発見するためには、乳房の内部構造がよく写し出されるよう、大きく薄く広げる必要があります。マンモグラフィーは乳房を押しつぶしているのではなく、乳房を薄く広げているのです。また、乳房を薄く広げると、内部がよく見えるだけでなく放射線の被ばく量も少なくて済みます(検査時に乳房の厚みが1センチ薄くなると、被ばく量が半分になります)。乳房を薄くすれば、検査の精度が上がり被ばくも少なくて済む、つまり一石二鳥のため、ポジショニングをする技師は一生懸命に乳房をセットするのです。

 写真で「乳房の正常な構築を乱す所見」で発見された乳がんのマンモグラフィーを示します。マンモグラフィーは検診として唯一、乳がんの死亡率を低下させられることが証明されている検査で、検診だけでなく、乳がん術後の定期検査としても行われています。

 マンモグラフィーに携わる技師は、乳がん検診精度管理中央機構が提唱する知識習得と訓練を受けていますが、もし、検査中に痛みを我慢できないときは遠慮せずに技師に伝えてください。どうか、乳房を薄く広げるポジショニングの重要性を理解して、技師と息を合わせて検査に臨んでいただきたいと思います。