藤田明宏監督と工藤昌義コーチ。岐阜県が誇る高校野球の名将2人がコンビを組んで5季目の朝日大がV戦線をひた走っている。東海地区大学野球岐阜リーグでこれまでも序盤は白星を重ねながら終盤で上位チームの壁に阻まれてきたが、今季は違う。開幕6連勝で迎えた4月26日の5季連続優勝を狙う王者・中部学院大との初戦は1―2で惜敗し、2位に後退した後、27日のカヤバスタジアムでの第2戦は劇的なサヨナラ勝ち。8季ぶりに王者から白星を挙げ、7勝1敗で岐阜聖徳大との同率首位に返り咲いた。躍進の要因は名将コンビによるチームづくりと選手起用、巧みな戦術にほかならないが、立役者は4年生にしてエースの座を勝ち取った右腕・川渕恒輝だ。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

◆連投リリーフのエースの力投が劇的サヨナラ呼ぶ
絶体絶命だった。中部学院大との第2戦八回表、力投してきた4年生左腕下里琉稀(海津明誠高出)が七回に2失点で3―3で追いつかれ、この回も連打を浴びて1死一、三塁。藤田監督はここで前日の第1戦で122球完投したエース川渕をマウンドに上げた。
最初の打者を死球で満塁にしたものの130キロ後半のストレートは走り、得意球のカットボールもさえて、空振り三振、遊ゴロに仕留め、ピンチを切り抜けた。
相手も七回からエースの冷水秀輔が登板し、立ちはだかる。川渕投入で流れを変えたはずの八回裏は2死から太田聖翔(1年・市岐阜商高出)が中前打を放つも得点につながらず、九回表。この回もエースがマウンドで躍動した。
先頭に中前打、送られて1死二塁で3番江川日那太に死球を与えて1死一、二塁。迫りくる王者の重圧にもエースは極めて冷静だった。...