京都市左京区で行われた京都大病院の記者会見=14日午後

 京都大病院は14日、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されなくなる1型糖尿病の患者1人に対し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した「膵島細胞」というインスリンを出す細胞を移植する臨床試験(治験)を実施したと発表した。患者は経過良好で既に退院しており、最大5年間にわたり経過観察する。

 今回の治験は、治療の安全性を確かめることが目的。今後、2例目に向け準備を進める。

 手術は2月に実施。作製した膵島細胞を薄いシート状にし、腹部の皮下に移植した。

 京大と武田薬品工業が共同研究してきた技術を引き継ぎ、iPS細胞を使った再生医療に取り組む企業「オリヅルセラピューティクス」(神奈川県)がシートの製造に携わった。

 1型糖尿病は、膵臓の細胞が自己免疫などによって壊れて発症する。血糖値を下げるため毎日インスリンを皮下に自己注射する必要があるほか、低血糖による失神が起こることもあり、実用化すれば患者の負担軽減につながる可能性がある。