研究グループの岐阜薬科大の原英彰学長(奥)と久世祥己助教=岐阜市大学西、同大
血管のあるiPS細胞由来の網膜ミニ臓器を作る概略図(岐阜薬科大提供)

 岐阜薬科大(岐阜市大学西)は、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った目の網膜の立体的な臓器(ミニ臓器)=オルガノイド=に血管を付けることに成功したと発表した。同大によると、全国的に珍しい取り組みという。

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 同大の原英彰学長や嶋澤雅光教授、中村信介准教授、久世祥己助教らのグループが長良医療センター(同市長良)と2019年から共同研究していた。

 臓器の機能を体外で再現する「ミニ臓器」を作る取り組みはさまざまな臓器で進められており、特に細かな血管が広がる網膜は障害を受けると自然に元に戻ることはできないため精密なミニ臓器が求められている。

 一方、ヒトのiPS細胞から作った従来の網膜のミニ臓器には血管がなかったため、血管に異常が生じることで視覚障害などを引き起こす網膜血管疾患の仕組みを調べることがこれまで困難だった。

 研究グループよると今回、網膜のミニ臓器に血管を付けたことで、糖尿病の合併症の一つである糖尿病網膜症といった網膜血管疾患の仕組みの解明や、新たな治療薬の開発に役立つという。

 久世助教によると、まずヒトのiPS細胞で作った血管のミニ臓器から、血管を構成する細胞のペリサイトと血管内皮細胞のみを摘出。取り出した両細胞とヒトのiPS細胞を混ぜ合わせ、刺激を与えたところ、血管が付いた網膜のミニ臓器が作製できたという。

 原学長は「この成果により新薬の開発成功率を上げることができる」と話している。