柏原正樹氏

 数学分野で最も権威ある賞の一つ、アーベル賞受賞が決まった京都大の柏原正樹特任教授(78)は、子どもの頃に学んだつるかめ算に魅了され、数学者の道に進んだ。代数解析学や表現論と呼ばれる分野で功績を残し、国際数学連合によるチャーン賞や、稲盛財団の京都賞など、国内外で多くの受賞歴を持つ。

 柏原さんは1947年、茨城県結城市生まれ。ツルとカメの頭の合計と足の合計を元にそれぞれの数を求める算数の問題をきっかけに、数字の代わりに文字で表された変数を使って計算する代数学が好きになった。

 進学先の東京大で代数解析学の創始者である故佐藤幹夫さんと出会い、この分野の研究に取り組む。23歳で確立した「D加群」理論の基礎は長年、日本語の論文しかなかったが、世界に大きな影響を与えた。

 アーベル賞授与の決定に当たり、ノルウェー科学文学アカデミーは、柏原さんが多くの数学者と一緒に研究してきたことにも注目。「現代数学の最前線にあり続け、何世代もの研究者にインスピレーションを与え続けている」とたたえた。趣味は余暇に楽しむ卓球だという。