健康経営、DXの活用でさらに前進

 従業員等の健康管理を経営的な視点で考えて、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する「健康経営」。経済産業省の「健康経営優良法人」の中小規模法人部門上位500社の「ブライト500」に4年連続で選ばれた関市下有知の大野ナイフ製作所の大野武志社長に、協会けんぽ岐阜支部の豊田正康支部長が健康経営への思いや取り組みについて聞きました。

全国健康保険協会(協会けんぽ)

岐阜支部 支部長

豊田 正康 氏

大野ナイフ製作所

代表取締役社長

大野 武志 氏

4年連続で「ブライト500」に輝く

豊田 3月10日に発表がありましたが、今年の「ブライト500」の認定おめでとうございます。2022年から4年連続の認定となりました。

大野 ありがとうございます。刃物業はいわゆる3K(きつい・汚い・危険)の職場だと言われていました。しかし、良い商品を作るにはクリーンな製造工場であることは必須であり、クリーンなことは付加価値にもなります。そして経営者や管理職は社員の「安全・健康・家庭」を守るのが使命です。こういった視点から、20年以上前より費用全額会社負担にてインフルエンザの予防接種を実施しています。毎年11月に弊社で集団接種をしているのですが、派遣等の間接雇用も含め、希望する全従業員が対象です。

豊田 インフルエンザの予防接種に費用補助をする企業は年々増えている印象はありますが、20年以上前から行っているとは。間接雇用の方も対象とすることで集団感染のリスクが抑えられますのでこの点は大きなことだと思います。

昼食のヘルシー弁当に費用補助

大野 他にも昼食の支援を行っています。長年、関給食センターのお弁当を注文しており、その費用の半額を補助してきました。5年ほど前によりヘルシーな「健美ランチ」の販売が開始されたため、弊社注文分は全て切り替えました。値段は少々高いのですが、従業員の負担額は通常のお弁当のときのままに据え置いています。

豊田 昼食は交代制ですか。

大野 昼は製造ラインを停止しますので、正午から1時間、昼食に充ててもらっています。加えて午前10時と午後3時からそれぞれ10分間も休憩時間にしています。猛暑日には午後3時からの休憩時間に全員にアイスキャンディーを配りました。熱中症予防のために行ったことですが、すぐに買いに行ってくれる従業員がいるからこそできること。これ以外の事例につきましても、働きやすい職場づくりについて一緒に考えてくれる従業員がいるからこそできていることだと思います。

豊田 運動機会の提供についてはいかがでしょうか。

大野 毎朝のラジオ体操は長年続けています。8年前にはマラソン部が立ち上がりました。地元の駅伝大会の際などは広くメンバーを募り、一番多い時は5チーム30人が参加しました。エントリー費用もユニフォーム代も全て会社側で負担しました。マラソン部とほぼ同じ時期にゴルフ部もできまして、年間一人あたり5000円の活動費を補助しています。足りない分は追加で補助することもありますので、少ない負担でスポーツに取り組めているかと思います。スポーツと健康は密接な関係にあると考えていますので、会社として全力でサポートしていきたいです。

工場の見える化で生産性が向上

豊田 話は変わりますが、事務所の大きなモニターが目を引きました。モニターでは何を確認しているのでしょうか。

大野 工場全体をリアルタイムで「見える化」する生産管理システムで、モニターを見れば生産量や進捗がリアルタイムで確認できます。工場内の各部署の気温、湿度、不快指数も表示されています。モニターを見て遅れている工程に人員を割り振ることが容易になるなど生産効率が大幅に向上。このシステムは、名古屋商工会議所の「NAGOYA DX(デジタルトランスフォーメーション)・生産性向上アワード2024」の優秀賞にも選ばれました。システムの導入によって、残業が月平均で8時間ほどに、有給休暇取得率は9割を超えるなど、健康経営を進める上でも大きな効果が出ています。残業を少なくすることと休みを多く取っていただくことで、家族と過ごす時間を大切にして心の健康にも寄与していきたいです。

豊田 今では多くの企業が「健康経営をしなければならない」という思いを持っているでしょう。しかし何から始めたら良いかわからないという相談をよく受けます。予防接種や食事、運動、DXによる働き方改革など、参考になる取り組みばかりです。

 保険者としての立場からのお願いになりますが、医療費が高騰する中、健康経営の推進は医療費適正化につながる重要な取り組みですので、ぜひ皆さまに参考にしていただければと思います。本日はありがとうございました。