ブリやタチウオ、イカにフグ。買い付けに奔走した表情に充実感がにじむ。能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市で、約70年続く鮮魚店「中小路商店」が被災を乗り越え再開し、地域の飲食店を支えている。3代目の中小路武士さん(42)は廃業も検討したが、かつての得意先からの復活を望む声をきっかけに再営業を決意。数時間かけ遠方の市場で魚を仕入れる毎日だ。
27歳から店で働く。地震前は地元の居酒屋や旅館など約40店舗に卸し、神奈川県の飲食店などにも配送していた。
昨年元日、輪島市の自宅で揺れに襲われ机にしがみついた。収まるとはだしで飛び出し、高台に軽トラックで避難。車中で4日間過ごした。
自宅は無事だったが、隣接する店舗は壊れた配管から海水が流れ出し水槽内で傷んだ魚が散乱していた。「終わった。もうどうにもならない」。近隣の飲食店も被災し「客がいないのに店を開けても意味がない」と途方に暮れた。
被災後は同じように店を失った料理人らと一緒に活動し将来を語り合う中で、店を復活させたいと次第に気持ちが高まった。