
笠松・ジュニアグローリーはミランミランに騎乗した筒井勇介騎手はガッツポーズでゴールイン
キラキラと3歳新星が輝いた。田口輝彦厩舎期待の牡馬ミランミランが、筒井勇介騎手(41)とのコンビで地元3歳重賞「第2回ジュニアグローリー」(SPⅢ、1400メートル)を圧勝した。門別デビューから11戦目で重賞を初制覇。筒井騎手は昨年8月の復帰後初めてとなる重賞Ⅴを飾った。
ミランミランは父ニシケンモノノフ、母ミラノリッチで母父がキングカメハメハという血統。田口厩舎は今年重賞2勝目と好調。2着はノリノリブリランテ(原口次夫厩舎)=加藤聡一騎手=、3着にはセンゴクブショウ(笹野博司厩舎)=望月洵輝騎手=が踏ん張った。

1周目ゴール前、逃げるノリノリブリランテの2番手でミランミランが追走
東海馬限定で笠松から7頭、名古屋から4頭が参戦。ノリノリブリランテ(牡3歳)が逃げて、ミランミランが2番手でピタリ追走。3コーナーから2頭のマッチレース。最後の直線ではラスト100を切って、ノリノリブリランテの脚色がいっぱいになり、外のミランミランがグイッと一伸びし4馬身差でゴールイン。その瞬間、筒井騎手は左手を突き上げてガッツポーズ。4年5カ月ぶりにつかんだ重賞Ⅴの喜びをかみしめた。
ミランミランと筒井騎手は名コンビ。昨年12月の笠松初戦、ジュニアキングを勝った時にもガッツポーズが出て「復帰後、初の準重賞を勝つことができうれしかった」とにっこり。準重賞、重賞を制しこの馬に懸ける思いは相当強いようだ。

返し馬で気合乗り満点のミランミランと筒井騎手
■大きな試練を乗り越えて喜びも格別
2002年にデビューし、1300勝超え名手の筒井騎手だが、大きな試練を乗り越えての重賞勝ちで喜びも格別だ。笠松競馬場での馬券不正購入を巡る一連の不祥事の余波で、筒井騎手は3年半も騎手免許がない状態が続いたが、最高裁で処分取り消し訴訟の勝訴が確定。厩務員として調教助手も務めながら、昨夏ジョッキーとしてコースにカムバック。「またリーディングに復帰できるよう頑張りたい」と攻め馬から情熱を注いできた。
2010年には女傑エレーヌとのコンビで東海ダービーなど重賞8勝(年間重賞勝利数1位タイ)を挙げて、栄えあるダービージョッキーになった。19、20年には笠松リーディングを獲得。重賞勝利はミランミランで通算13勝目。名古屋のベイスプリント(ウラガーノ、2020年)から4年5カ月ぶり、笠松重賞Ⅴは東海ゴールドカップ(ダイヤモンドダンス、18年)以来となった。

ジュニアグローリーを制覇したミランミランと喜びの関係者
■「でかいところを取れるよう頑張りたい」
久々の重賞制覇に筒井騎手は「やっぱりうれしいですね」。前走・ゴールドジュニアで1番人気のミランミランは4着に敗れたが、立て直して入念に乗り込んできた。馬力、反応ともに好感触で挑んだ一戦。すんなりとノリノリブリランテの2番手につけて「前走上位(3着)の馬がハナを切ってくれたので、それを目標にして最後かわせればいいなと」。手応え抜群で追い出してからも「期待通り動いてくれて馬が頑張ってくれました」とたたえた。久々に重賞タイトルを手に入れ「これからもどんどん、でかいところを取れるよう頑張りたい」とファンの応援を力に活躍を誓った。
田口調教師は「順調に乗り込め、前回よりもかなり馬の出来が良かった」と勝利を喜んだ。今後については「2000メートルはちょっと長いような気がしますね」と順調ならネクストスター中日本(笠松、4月1日)、ぎふ清流カップ(6月12日)を目指す構えで、笠松の同じ舞台での1400メートル戦が照準となる。ファンとしては東海3冠に挑んでほしい思いもあるだろうが、駿蹄賞は2000メートル、東海優駿は2100メートルとやや長い。やはり距離適性が優先されそうで、父ニシケンモノノフはJBCスプリントを勝つなど短距離路線で活躍した。

ジュニアグローリーで復帰後初の重賞勝ちを飾った筒井騎手(左)
■「競馬がうまい。折り合いがついて成長」
筒井騎手は「競馬がうまい。道営時代のレースよりも折り合いがつくようになって、指示通りに動いてくれる。前のようにガァーと行かなくて、笠松に来た時よりも成長していますね」と本格化してきたミランミランとのコンビで突っ走る構えだ。
道営2歳時に8戦2勝。大井の鎌倉記念2着を経て笠松に移籍し、筒井騎手も転入直後から成長具合に注目。12月の準重賞・ジュニアキングをあっさり勝って「思った以上に反応が良く、これから大きなところを狙っていきたい」と意欲を見せていた。ライデンリーダー記念も視野に入っていたが、田口調教師によると「爪をやっちゃってね。古傷があって何かを踏んづけて」と出走を回避したが、すぐに良くなったそうだ。
オグリの里としても「攻め馬から手応えを感じていた期待馬で鎌倉記念2着」と聞き、笠松転入時から注目してきた1頭。前走では勝ったページェントから2秒4も引き離されて「どうした、けがでもしたのか」という走りだっただけに、この日のパフォーマンスにはホッとした。笠松の大将格へと飛躍する大物感があり、さらなる成長を期待し見守っていきたい。

リーディング争いでも注目される渡辺竜也騎手(手前)と筒井騎手
■渡辺騎手とのリーディング争いにも注目
リーディング返り咲きを狙う筒井騎手は34勝(3月7日現在)。3年連続リーディングの渡辺竜也騎手が35勝。まだ先は長いが、けがなどなければ2人の首位争いになりそうだ。今年は暑い夏場の6~8月に馬場改修で2カ月間もレース休止となる。前半と後半の2シーズン制のようになるが、2人とも「夏男」のイメージがあり、白星を量産する季節に一服となる。昨年は232勝を挙げて最多勝記録を更新した渡辺騎手だが19、20年には筒井騎手とのリーディング争いに敗れている。2人とも「お互い年間フルに戦って真のリーディングに」との思いも強いはず。3月前半戦では2人のワンツーが5回もあり、渡辺騎手が4勝だった。

笠松競馬場での騎乗も多い田口貫太騎手。カメラを構えただけでこの自然体スマイルはやはり「岐阜の宝」だ
■田口騎手、親子タッグで笠松重賞Ⅴを
ジュニアグローリー前のレースではJRA交流「河渡宿特別」があり、田口貫太騎手も参戦。4番人気の芦毛馬ワンダーリズム(牡3歳、高柳大輔厩舎)に騎乗しスイスイと逃げ切って初勝利に導いた。
田口騎手は笠松でのJRA交流戦にも多く参戦。エキストラ騎乗でジュニアグローリーにも騎乗したが11着。また当日に笠松、名古屋の騎手が休むと騎乗依頼が舞い込む人気者。10Rでは塚本征吾騎手からの騎乗変更で3着。笠松重賞に乗る機会も増え、2月のゴールドジュニアでは父・田口輝彦厩舎のハビビでミランミランに続く5着と掲示板を確保した。親子タッグで笠松重賞を勝つ日を楽しみに待ちたい。
JRAでは通算101勝(地方交流を含む)を挙げて「見習騎手」を卒業した田口騎手。年末、笠松でのトークショーでも盛り上がったのが髪形問題。現在の丸刈りから長髪も解禁になるが、見習騎手卒業を機にどうするのか。「そのままがいい」か「好きなように伸ばせ」か。まあ本人が決めることだし、どんな髪形になっても自然にこぼれる貫太スマイルは「岐阜の宝」でもあり、ファンの心を和ませてくれる。

白銀争覇を制覇した地元・田口輝彦厩舎のサヴァと岡部誠騎手(右)ら喜びの関係者
■白銀争覇は田口厩舎のサヴァ、岡部騎手で差し切りV
今年序盤の笠松重賞戦線を振り返ってみると、田口輝彦厩舎が2勝を挙げており、近年の笠松所属馬の不振ぶりを脱出した勢いがある。リーディング上位の笹野博司厩舎や後藤佑耶厩舎にも大きな刺激になっていることだろう。重賞だけでなく最下級のC級から賞金をもっとアップしていただき「笠松で走らせよう」というオーナーさんが増えれば、さらに有力馬を入れてもらえるのでは。
1月の白銀争覇(SPⅡ)は田口厩舎のサヴァが差し切りVを決めた。騎乗したのは主戦の岡部誠騎手。新年早々の笠松所属馬優勝に地元ファンの声援は大きかった。
岡部騎手は「直線を向いてもう1回気合を入れたらギアが入って大丈夫だと。笠松所属馬で笠松重賞を勝てたことは本当に光栄です。強い馬をオーナーさんが連れてきてくださって、もっと笠松が盛り上がってくれればうれしいです」と喜んだ。地方競馬通算5200勝以上を挙げ、重賞128勝という岡部騎手。今年は白銀争覇が唯一の重賞勝ちだが、オグリキャップ記念は過去5勝と得意で、今年も騎乗があれば注目だ。

ゴールドジュニアを1着でゴールする名古屋のページェントと友森翔太郎騎手(左)。2着はケイズレーヴと木之前葵騎手
■ゴールドジュニアは名古屋・ページェントⅤ、笠松大好きな友森騎手
2月のゴールドジュニア(SPⅡ)は名古屋のページェントが友森翔太郎騎手で、ライデンリーダー記念に続いて笠松重賞を連勝。笠松勢はミランミランの4着がやっと。ページェントは連闘で挑んだ名古屋グランプリを7馬身差で圧勝した。珍しく火曜日に笠松重賞(ゴールドジュニア)が行われ、中7日連闘での名古屋重賞挑戦が可能になった。
友森騎手は笠松競馬場が大好きのようで、重賞17勝中11勝が笠松で挙げたもの。メモリージルバで5勝、セイルオンセイラーでは3勝と笠松で「必殺仕事人」ぶりを発揮。昨年は4勝で渡辺竜也騎手(3勝)より重賞Ⅴを量産。地元ファンも「また友森騎手か、勝ち過ぎでしょう」とあきれ顔でもあった。

ブルーリボンマイルを勝った兵庫のヒメツルイチモンジと笹田知宏騎手(右から2人目)ら喜びの関係者
■ブルーリボンマイルは兵庫・ヒメツルイチモンジがセブンカラーズ倒す
そして全国地方交流の古馬牝馬重賞「ブルーリボンマイル」(SPⅠ)は、兵庫の6番人気・ヒメツルイチモンジが笹田知宏騎手とのコンビで制覇。東海ダービー馬セブンカラーズ(名古屋)をねじ伏せて重賞初Vを飾った。高知のグラインドアウトに騎乗した渡辺竜也騎手が6着。笠松勢では4番人気と支持を集めた筒井騎手のキスリング(田口厩舎)は7着に終わった。
この全国重賞では、有力馬が少ない笠松競馬の現状も浮き彫りになった。「人馬とも笠松」は筒井騎手&キスリングのみで、笠松3頭には名古屋の騎手が騎乗した。笠松のエース渡辺騎手には、有力な地元馬は見当たらず、高知の馬に騎乗した。若手とベテランに二分され、30代の中堅騎手が1人しかいない笠松勢。地方全国交流重賞はオグリキャップ記念、笠松グランプリなどを含めて年間5レース。生え抜き馬の育成が理想ではあるが、南関東やJRAからの転入でもいいので、笠松所属馬としてダートグレード戦線にも挑んでほしい。
かつての笠松重賞では、アンカツさんや川原正一騎手が「◎印」をもらうことが多く、確勝級でファンの期待に応えていた。JRAの重賞も射程圏内でレジェンドハンターやフジノテンビーは、いきなりGⅡのデイリー杯3歳Sを勝ち「不思議の国・笠松」とも呼ばれた。古き良き時代の栄光ではあるが、ファンはウイナーズサークルで地元騎手の笑顔をもっと見たいものだ。

次開催で誘導馬を引退するエクスペルテ(左)とウイニー。21日と24日の最終レース終了後に「ふれあい撮影会」が開かれる
■21日にエクスペルテ、24日にウイニーの「ふれあい撮影会」
笠松競馬の本年度開催は第21回の4日間を残すのみとなった。長年、競馬場で働いてきた誘導馬のエクスペルテとウイニーは残り2日ずつの出番で引退する。ファンたちとのお別れの場として、21日と24日の最終レース終了後、ウイナーズサークルで「ふれあい撮影会」が開かれる。
各日1頭ずつで21日にエクスペルテ、24日にはウイニーが撮影会に出演。オリジナルクリアファイルの配布もある、エクスペルテは19日、ウイニーは20日にも誘導馬を務める予定だ。家族連れで笠松競馬場へ遊びに来ていただきたい。
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
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