岐阜県郡上市白鳥町に石徹白(いとしろ)という集落があります。福井県境に接する山奥の集落です。過疎化で人口は200人を切ったといいますが、縄文時代の遺跡があり、白山信仰の拠点としてにぎわった歴史、独自の文化が息づく一帯です。この地域の文化を発信する新たな拠点をつくろうとする動きが始まりました。築150年以上の古民家を改修し、宿にしようというものです。
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改修しようとしている古民家は「助七(すけしち)」という屋号で呼ばれています。かつて徒歩で石徹白を訪れる際、最初にあった集落の入り口に位置します。木造二階建てで、一番古い箇所は300年以上前のものとか。馬小屋、屋根裏の「つし」、家族が集まるいろりのある部屋「うちんなか」、仏間の「おくのでい」など石徹白の家の特徴が詰まっていますが、10年ほど前に空き家になりました。
計画では、こうした石徹白の家の特徴を再生。伝統的な暮らしや地元の食文化を体験できる一棟貸しの宿にします。「助七」に残されていた古い生活道具を民具ギャラリーのように展示。増改築された部分を撤去し、かつての石徹白の暮らしを伝える拠点にします。

計画を立ち上げたのは、平野彰秀さん(49)、馨生里さん(43)の夫妻です。岐阜市出身の二人は2011年に石徹白へ移住。「石徹白洋品店」を立ち上げ、石徹白に伝わる野良着「たつけ」を現代に合う形で復刻、生産し、国内外に発信しています。「助七」では「たつけ」を着て過ごすことができたり、自分で服や布を藍染め・草木染めしたりするプランも検討しています。

人口が200人を切ったという石徹白集落ですが、平野さんたちのように移住してきた人たちは40人になるといいます。
馨生里さんはこう話します。「ただ建物を保全するのではなく、こうしたかつての暮らしが感じられる建物を復旧していく。その第一歩としてこの事業を考えています。家があり、人がいて、石徹白ならではの暮らしが営まれ、コミュニティとなっていく。そんな場を作っていくことで、人口減少に歯止めがかからない石徹白ですが、石徹白らしい形で集落としての存続を目指していけたらと考えています」。
今年4月に着工し、9月に宿をオープンさせる計画です。クラウドファンディング(CF)サイト「OCOS(オコス)」で3月9日まで資金の一部の協力を求めています。問い合わせは石徹白洋品店、電子メールinfo@itoshiro.or.org
