睡眠中の脳は過去の経験の記憶を定着させるだけでなく、近い未来の出来事を記憶できるよう準備していることをマウスの実験で確認したと、富山大などのチームが28日付英科学誌に発表した。井ノ口馨卓越教授(神経科学)は「睡眠が過去の記憶の定着に必要であることは知られていたが、同時に未来の記憶獲得にも影響することが示された」としている。
睡眠中に記憶を定着させる機能を持つ脳の神経細胞「エングラム細胞」はいつ、どのようにできるか不明だった。チームは神経細胞の活動を蛍光タンパク質で測定できる遺伝子改変マウスの脳の海馬にレンズを挿入し、蛍光顕微鏡で観察した。初日はマウスを丸い部屋で自由に行動させた後、睡眠を経て、2日目は丸い部屋と四角い部屋で過ごす経験をさせた。
データを解析すると、睡眠時にはエングラム細胞集団とともに、別の細胞集団も活動していることが判明。別の細胞集団は四角い部屋で過ごす間、エングラム細胞に特有の活動を示していたことなどから、チームは「エングラム予備細胞」の集団だと考えた。