成人の肝細胞を培養して14日目のオルガノイド。大きさは約0・3ミリになった(佐藤俊朗慶応大教授提供)

 成人の肝細胞を増殖させ、代謝機能を持った「肝細胞オルガノイド」と呼ばれるミニ臓器を作ることに成功したと、慶応大のチームが発表した。これまで増殖させると別の細胞に変化し、機能が失われてしまうことが課題だった。チームは創薬や脂肪肝の治療法開発などにつながるとしている。成果は16日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 肝臓には、体内のアミノ酸などを分解して糖を作るほか、老廃物のアンモニアを尿素にしたり、薬物を解毒したりする代謝機能がある。

 チームは、細胞の増殖に関わる「オンコスタチンM」という物質を使い、薬の研究開発などに用いられる市販の成人肝細胞を培養。別の細胞に変化することなく100万倍以上に増殖し、100日以上機能を失わなかった。肝臓に関わる複数のホルモンを投与すると細胞が成長し、肝細胞で作られた胆汁を運ぶ「毛細胆管」のような構造もできた。

 代謝機能に関わる遺伝子の働きを調べると、成人の肝細胞に近いレベルに達しており、糖や尿素などを作り出す能力は、生きた人の肝臓に匹敵していた。