1945年3月10日、現在の東京都墨田区、台東区、江東区を中心に、10万人が死亡したとされる東京大空襲をテーマとした映画「ペーパーシティ」が、墨田区の映画館で上映されている。在日オーストラリア人監督のエイドリアン・フランシスさん(50)は「大空襲のことを知る人が増えてほしい」と願う。
東京大空襲は米軍が東京・下町の木造密集地を標的に大量の焼夷弾を投下した無差別攻撃。映画は3人の証言を軸に展開する。心身に傷を抱えながらも体験を語り、国に補償を求める活動に取り組む姿が描かれている。
タイトルには「紙のように燃やされた東京」という意味がある。取材時に、被害者が当時の状況を説明するため手にしていた地図や名簿といった膨大な紙の資料のイメージと、被害者の「助かるのと死ぬのが紙一重」の言葉が重なった。
「紙は証拠となるが、破れやすく、もろい」とフランシスさん。甚大な犠牲を出したのに、街中に痕跡がほとんどないことに衝撃を受けたことも、製作のきっかけとなった。