前回に引き続いて、前岐阜高校監督の北川英治さん(53)に、テクニックを教えられる技術屋タイプと、マネジメントができる経営者タイプの二つの要素を兼ね備えた理想の指導者像や、データ野球、打撃・走塁・守備それぞれの意識の高め方など、慶応大時代をベースに培った指導者としての「原点」について聞いた。

―理想の指導者像は。
北川 私は指導者には大きく二つのタイプがあると思っている。それはテクニックを教えられる技術屋タイプの人と、マネジメントができる経営者タイプの人。でも、この二つの要素を兼ね備えている指導者がベストだと思うがあまりいないのが現状ではないか。
一昔前から現在まで、選手スカウトも含めて、マネジメントがたけた経営者タイプの指導者が高校野球では圧倒的に勝っている。テクニカルな部分をしっかりと教えられる指導者は高校野球界には極めて少ないのではないかと思っている。
勝っている指導者ももちろんだが、他の高校野球指導者の方々もテクニカルな勉強をされているが、動作の指導がなかなか難しいのが野球の奥深いところなのかなと。最近になりテクニカルコーチを抱える私立のチームが増えてきているが、予算の少ない公立高校では難しいところである。そこが私立と公立の差の一因にもなっていると思う。
私も自分なりに試行錯誤しながらテクニカルな部分を追求して、野球に限らずそれぞれの分野の専門家の方々にお会いして教えていただき、納得・理解してから自分に落とし込み、実際に自分で動きを再現してみて、こういう風に伝えれば分かりやすいかなと考えながら、指導してきた。
感覚的なところも言語化し、さまざまな練習の引き出しを用意して提示し、実践してきた。
慶応時代に、浪人してブランクがあり、かつ自分のような小柄な体で、あの高いレベルの中でレギュラーを取ろう、対等に戦おう、勝とうと思うと深く考え抜き、理詰めの追求をしないと勝ち目がないので、テクニカルな面は必然的に培われたのかもしれない。

―北川流データ野球も慶応時代にベースがありますか。
北川 現在は当時よりもかなり進化したデジタルデータ野球になっているが、昔のデータ収集はアナログだった。それでも当時はビデオミーティングとかを含めて、他チームと比べても慶応はかなりデータ野球を取り入れていたと思う。...