たわわに稲穂が実る桜洞城跡。左奥に標柱、その先に石積みや空堀の遺構が残る=下呂市萩原町萩原

 高山方面から国道41号を南進し、下呂市萩原町萩原の朝霧橋手前を左に入ると桜谷公園がある。

 公園駐車場に車を止め、清らかな谷川に架かる橋を渡って歩く。やや急だが、石が埋め込まれた登城道を登り切ると、広がる田畑風景。土塁に沿って西に進むと、下呂市教育委員会の「市史跡 桜洞城跡」の標柱。さらにその先の生い茂る草木の中に入ると、空堀や土塁、石積みの一帯が残る。

 桜洞城は十代で家督を継ぎ「国騒乱」を切り抜けた三木直頼が築城し、高山盆地侵攻に向けた拠点とした城。孫に当たる自綱(よりつな)が高山市松倉町城山に松倉城を築き、拠点を移すが、冬期は居住し「冬城」と呼ばれる。だが、眼前ののどかな田畑が戦国飛騨を制した三木氏拠点の城跡であることに、寂寥(せきりょう)感に包まれる。...