放射線治療医 田中修氏
寒い日が続きますね。2005年の2月16日は京都議定書が発効された日です。地球温暖化対策として二酸化炭素の排出量削減を先進国に義務付ける議定書です。さて、22年の現在、この議定書の効果は出ているのでしょうか。人間の未来に関わる問題ですので、他人事ではなく、一人一人の課題として考えていきたいですね。
今回は「緩和医療」について記します。生老病死、誰しもこの運命にあらがうことはできません。しかし、病と死をどのように過ごすかは非常に大事な問題だと思います。とりわけ私の専門分野である放射線治療が、がん治療の緩和医療(痛みなどの不快な症状の緩和)としてどのように役に立つのかを記します。
①脳への転移による神経症状の改善②骨への転移による痛みの改善③リンパ節転移に対するむくみの改善。この三つについて説明します。
① がんが脳に転移した場合、さまざまな症状があります。意識が低下したり、手足の動きが悪くなったりと、何となくおかしいといった感じが出現します。そして画像検査をして転移が発見された場合、治療が必要になります。治療方法は放射線治療、手術のどちらか、もしくは両方を用いて治療する場合もあります。放射線治療の良いところは、腫瘍にピンポイントで放射線を照射することで、開頭せずに治療が終了することです。治療期間も腫瘍が1センチ程度の小ささでしたら1時間で終わり、入院をする必要がありません。治療は1~3回で行うことが多いです。副作用もほとんどないため負担の少ない治療といえます。
② 骨への転移は、ほとんどが痛みで発見されることが多いのが特徴です。特に乳がんや肺がんは骨への転移が多いため、がんの発見時に全身の骨の状態を調べます。骨への転移は非常に痛い場合が多く、病的骨折をすることもあります。そのため骨に転移した場合は放射線治療をすることが第一選択であり、治療は5回ぐらいの通院で終了することができます。ほとんどの場合、副作用がないため、痛みが減ることにより、痛み止めの薬も減らすことができ、利点が非常に多い治療方法です。
③ リンパ節転移などでむくみが出た場合、放射線治療を用いることでむくみが改善することがあります。しかし、むくみが腕や脚がパンパンになるほどの場合、改善が難しいことがあります。そのためむくみが出たら早めに、まだむくみが大きくなっていないうちに放射線治療を検討してください。治療はむくみの部位によってさまざまであり、10回から20回ぐらいで治療が終わります。
いずれの症状もメスを入れることなく通院で治療が終わります。今は、放射線治療は5ミリの転移でもピンポイント照射で治療ができるようになりました。がん治療では緩和ケアと放射線治療は非常に大事です。主治医の先生に「放射線治療はどうでしょうか」と聞いてみるのも大切なことだと思います。医療の主役は患者さんです。
(朝日大学病院放射線治療科准教授)