試合を決したのは1―1で迎えた三回表1死満塁の一撃だった。打席には今大会好調の県岐阜商5番大東要介。中京ベンチはここで、エースの右腕桑田剛心をマウンドへ―。初球ファウルの後、桑田が投じた最大の持ち味ストレートを鋭いスイングではじき返した大東の打球は中堅手の頭上を越え、勝ち越しの2点二塁打。すかさずスクイズ、さらに暴投で一挙4点。絶対的エースと複数投手による継投の注目決戦は、覚醒したフルスイング打線に支えられた絶対的エースの県岐阜商に軍配が上がった。

県岐阜商×中京=7回裏、コールド勝ちを決めて喜ぶ県岐阜商のエース森=長良川

■継投桑田の自慢の直球を大東が勝ち越し2点二塁打で粉砕

 「組み合わせが決まった時から、森の先発を決めていた」と県岐阜商鍛治舎巧監督。

 対するプロ出身の中京藤本貴久監督は「いつも通り4、5人で試合をつくる」と今春の就任から確立し、今大会も機能してきた複数投手制で挑んだ。

 中京先発は初戦以来の2年生左腕浅野歩翔。一回、絶好調の2番駒瀬陽尊に変化球を右翼ソロを打たれたものの、変化球を軸に強打県岐阜商に粘り強く投げ続ける。

 対する森厳徳。「きょうも調子はよくなかった」と語る立ち上がり。先頭の1番稲嶺翔斗に遊撃内野安打されると2四球で2死満塁。6番畠中湧暉に右前打され、同点。さらに二走鈴木悠悟も本塁を突いたが、右翼加納朋季の好返球で勝ち越しは阻止した。

 「スライダー狙いがわかったので、カーブとまっすぐ中心に切り替えた」と森。二回からは本来の制球力を取り戻し、三ゴロの後は内外角いっぱいのコースを突く140キロストレートで連続三振。雌雄を決した場面はこの力投が呼び込んだ。

 三回表の県岐阜商。

 先頭の1番日比野遼司が甘い球を逃さず中前打。駒瀬は右飛に倒れたが、3番加納の死球、4番垣津吏統の四球で1死満塁。

 「ここで止めないと」と中京藤本監督は決断。「球に勢いのある桑田しかいない」と急きょ、準備20球のエースがマウンドに立った。...