インタビューに答える京都先端科学大特任教授の松波弘之さん

 温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに向け、高性能で省エネにも優れているとして、炭化ケイ素(SiC)を使った次世代パワー半導体が注目を集めている。実用化への道を切り開いた京都先端科学大特任教授の松波弘之さん(85)が26日までに取材に応じ、電気自動車(EV)向けの需要拡大が見込まれる中「白物家電での活用も広がってほしい」と夢を語った。

 SiCは炭素とケイ素の化合物。高温や放射線に強い特性があり、1950年代から注目されていた。ただ素材に適した品質の結晶を作ることは難しく、60年代後半には研究は下火になった。

 京都大で助手として勤務していた松波さんがSiCに出合ったのはその頃。可能性を確信し「世の中で使える材料にしよう」と取り組んだ。

 約20年をかけて、均一な高品質の結晶に成長させる革新的技術「ステップ制御エピタキシー法」を確立。実用化に寄与した。2023年に米電気電子学会の「エジソンメダル」を受賞。日本人4人目の快挙だった。