「量子暗号通信」について説明する東芝の担当者=2022年、ロンドン(共同)

 【ワシントン共同】盗聴が原理的に不可能な「量子暗号通信」を専用設備ではなく既存の光ファイバー通信網で実現したと、東芝などのチームが25日までに英科学誌ネイチャーに発表した。約250キロ離れたデータセンター間で送受信実験に成功。今あるインフラを活用し、安全で低コストな通信網が構築できる可能性を示した。

 量子通信は、ごく小さな粒子に情報を載せ、離れた場所に送る技術。途中で盗もうとすると確実に検知され、保秘が求められる金融や行政、医療での利用が期待される。

 長距離伝送に向いた「光子」を情報媒体として使用。254キロ離れたドイツのデータセンター間で送受信を試みた。

 光子が持つ情報はノイズの影響で壊れやすいため、受信側は極低温の環境でノイズを減らす特殊な検出器を使ってきた。今回は光の周波数を調節する手法でノイズを抑え、極低温冷凍機のない検出器でも情報を取り出すことに成功した。大阪大の山本俊教授は「安価で比較的性能が低い検出器でも250キロを超えるフィールド実験が可能だと示した。実用化に向け重要な成果だ」とした。