サッカーJリーグ2部(J2)のV・ファーレン長崎には、J1昇格とともに課せられた使命がある。被爆地にあるクラブとして、サッカーを通して平和を発信することだ。昨秋開業した本拠地は「ピーススタジアム」と名付けられ、戦後80年の節目に新たな舞台となった。
「戦争のない世界を」との願いが込められたクラブ名の命名に尽力したのは長崎・国見高サッカー部の監督として6度の全国高校選手権優勝を達成した名将、故小嶺忠敏さん。クラブの初代社長も務めた。
教え子で現在はクラブの役員を務める高木琢也さん(57)は、長崎で監督を務めた13年からの6年間は、8月9日の「原爆の日」に午前11時2分で練習を止め、外国人選手やサポーターと黙とうをささげた。
長崎の新スタジアムは爆心地から約1・5キロの長崎市中心部に位置。今年2月の開幕戦には2万人近くが詰めかけ、田河毅宜社長(39)は「ここでスポーツが行われていること自体が、長崎を最後の被爆地にしようというメッセージ」と平和の象徴へ生まれ変わった意義を語る。