明治から昭和にかけて活躍した近代日本画の巨匠横山大観(1868〜1958年)の絶筆とされ、長らく表に出ていなかった作品「不二」について、約半世紀ぶりとなる一般公開が始まった。島根県安来市の足立美術館が購入した。専門家は「実作品を見ることが可能になったことは意義が大きい」としている。
同館によると、「不二」の一般公開は78年に名古屋市で開催された展覧会が最後で、個人所蔵のまま半世紀近く表に出ていなかった。同館の織奥かおり学芸課長は、大観は富士山に自身の芸術の理想を重ねていたと説明。生涯を通し何度も富士山を描き、1500点以上の富士図を残したとされる。
「不二」は57年制作。晩年に体調を崩し寝込んでいた大観が、気力を振り絞り、不自由な姿勢で制作したという。縦46センチ、横57センチの和紙の上に、金色の空を背景にして、雪化粧の富士山を表現。山肌の陰影に力強い筆づかいが見てとれる。
日本近代美術史に詳しい東京文化財研究所の塩谷純上席研究員は「大観が富士山にこだわり続けたことを示す作品」とする。