日向灘に面した宮崎市の市街地。右は大淀川=2024年8月(共同通信社ヘリから)
 南海トラフ巨大地震 想定される被害の様相

 南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大で29万8千人が死亡するとの新たな被害想定を31日、政府の作業部会が発表した。前回2012年の想定は32万3千人で、政府は被害抑制の対策に取り組んできたが、1割の減少にとどまった。地形データ見直しにより、浸水エリアが広がる影響が大きい。避難者数は前回の最大950万人から、全人口の1割に当たる1230万人に増えた。

 震度6弱以上か、高さ3メートル以上の津波に見舞われるのは31都府県の計764市町村。経済被害額は最大270兆円で前回214兆円から膨らむ。全壊・焼失建物は、住宅耐震化などの効果で最大235万棟とわずかに減る。

 政府は前回想定を基に14年、対策推進基本計画を策定。死者数「おおむね8割減少」を掲げていたが、新想定は目標に遠く、避難対策やインフラ整備の大幅な見直しが求められそうだ。

 作業部会の報告書によると、死者29万8千人のうち津波による犠牲が21万5千人を占める。すぐ避難する人の割合を20%と仮定して計算した。