南海トラフ巨大地震に関する政府の作業部会が31日公表した被害の新想定では、経済的な被害は最も大きい場合で計270兆3千億円と試算した。政府当初予算の一般会計歳出の2倍を大きく上回る規模に匹敵する。政府が2013年に示した想定では214兆2千億円としていたが、物価高により復旧に必要な資材費などが高騰したことで膨張した。
被害額のうち、オフィスビルやマンションを含む建物、インフラなどの直接被害が224兆9千億円。倒壊した住宅や工場の復旧費用などを算出した。
このうちライフラインは下水道が3兆4千億円、上水道が8千億円、電力は1千億円。暮らしは大きく制限され、上水道は1日後に最大3690万人が利用できなくなる。停電は最大2950万軒で発生する。
残る被害額は、生産・サービス低下による影響で45兆4千億円。供給網の寸断、企業の倒産に伴う失業者の増加など、生産力に与える1年間の影響を反映させた。
太平洋沿岸地域に集積する製造業や、卸売・小売業の損失が大きい。