「投げたい…」。背番号1はブルペンから苦しい戦況を見つめ、マウンドへの思いを募らせた。だが、左肘痛で投げることができない。第97回選抜高校野球大会第3日は20日、甲子園で1回戦を行い、第1試合で大垣日大が西日本短大付(福岡)に0―6で敗れた。最大のキーマンである1年生左腕谷之口翔琉が登板を回避、好調だった打線も課題であり続けた右投手のスライダーを攻略することができずに敗れた。高校野球取材歴37年のベテラン記者が、高橋正明監督初陣の大垣日大の戦いぶりをリポートする。

大垣日大×西日本短大付=4回裏西日本短大付2死一、二塁、ピンチを迎えマウンドに集まる大垣日大ナイン=兵庫県西宮市、阪神甲子園球場

 ◆最大のキーマン谷之口が登板回避 中野翔の力投も実らず

 相手の西日本短大付は左打者が6人と多いだけに、最大のキーマンは選抜で背番号1に戻った谷之口だった。さらに背番号1を2年生右腕の中野翔真に譲った初の全国舞台・昨秋の明治神宮大会で、切れ抜群の落差のあるカーブと右打者の内角を厳しく突くストレートで素材の高さを示しただけに、聖地でのブレークに大きく期待を集めた。

 シーズンイン後、持ち味である腕がしっかりと縦に振れるよう、フォームの修正も図りながら、初の夢舞台に向けて、順調に仕上げてきた、はずだった。

 だが、アクシデントの前兆は好投した今月10日の近大高専(三重)との練習試合にあった。...