農政改革に取り組んだ元農林水産事務次官の奥原正明氏に、コメ不足への対応として求められる政策について聞いた。
―政府が備蓄米を放出した。
「本来ならスーパーの店頭でコメの品薄が顕著になった昨年夏の時点で放出しなければいけなかった。そうしておけば、ここまで異常な価格高騰を招くことはなかった。農政の失敗だ」
―なぜ遅れたのか。
「放出するとコメ価格が下がると、農水省は農協や政治家から批判されることを意識したのではないか。だが農政の最大の目的は食料の安定供給であり、消費者のために備蓄米制度がある。供給に支障があるときに使わなければ意味がない」
―今後、備蓄米をどのように利用すべきか。
「常にスーパーや外食事業者など実需者のコメの調達状況を把握し、必要なときには備蓄米を迅速・円滑に供給していくという方針を明確に打ち出すことが必要だ。ただ、備蓄米の放出は対症療法でしかない」
―どんな対策が必要か。
「コメ政策を生産縮小から拡大に転換していくことが必要で、それには輸出の拡大が不可欠だ」