鍛治舎巧監督(73)のインタビュー5回目は「名将のチームづくり」。しっかりした根幹、土台を築きつつ、全国の高校野球の現状、次代も見据え、個々の選手の特性を見抜くなど、あらゆる状況に対応するチームづくりのコツについて聞いた。
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―新基準バット導入元年だった昨年2024年、選抜優勝の健大高崎(群馬)、夏優勝の京都国際の勝因、そのチームづくりとは。
鍛治舎 選抜の健大高崎は何より勢いで優(まさ)った。選抜前のオープン戦で初戦、2戦と圧勝して勢いが加速した。安定した投手力、迫力ある打線、伝統の走力、それに勢いが加わり、そのまま優勝まで駆け上がった印象。選手を伸び伸びプレーさせた青柳博文監督の采配は素晴らしかった。
2017年選抜だったと記憶しているが、健大高崎が機動破壊を標ぼうしていた頃、私が監督だった秀岳館(熊本)が準々決勝で圧勝。U18エース格に成長した川端健斗(立教大卒)が完投勝利。「機動破壊を破壊するには、無視することだ」と送りだしたが、指示通り、健大高崎相手に、ただの1球も、けん制球を投げなかった。
試合後、青柳監督とコーチがストレッチ会場に来て「いくつか走りましたが、完全に無視されてむなしい盗塁でした。走るだけでは甲子園では勝てませんね。三拍子そろった秀岳館の野球を目指します」と言ったのを懐かしく思い出す。
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それ以降、翌2018年、私が県岐阜商に移ってからも毎年、岐阜に来て試合を重ねた。長い付き合いになったが、健大高崎優勝の瞬間は、感慨深く涙があふれた。
京都国際はグラウンドが狭いので、バッティング練習は室内でしかできない厳しい環境。そこで、強いゴロを打てと、一日千本以上、ずっと強いゴロを打たせたようだ。それが甲子園のヒットゾーンの三遊間、一、二塁間、センター前に、低い当たりで抜けるヒットを量産することになり、打線がしっかりつながって勝ち切った。
優勝の要因として、中崎琉生と2年生の西村一毅というチェンジアップのいい左ピッチャーが2人いたのが大きいが、低く速い打球をヒットゾーンに集めたのが優勝したもう一つの大きな要因だった。
―健大高崎の新たな野球は〝鍛治舎野球〟がモデルだったんですね。京都国際も時代にマッチした野球で日本一になった。
鍛治舎 京都国際の小牧憲継監督が先日、私の枚方の自宅に遊びにきてくれた時に「あのバッティングだけでは次は勝てないよ。相手も研究を重ね対応してくるからね」と伝えた。
「次に何がくるかわかっているかな。...