鍛治舎巧監督(73)のインタビュー4回目は「名将の育成法」。全国のどの指導者とも一線を画す、名伯楽ならではの育成の仕方、こつは何かを聞いた。
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―選手勧誘の際、ほかの指導者が採りたい選手と、ご自身が採りたいなと思う選手が違うと以前、話されていましたが、選手のどこを見るんですか。
鍛治舎 やっぱり伸びしろ。現段階で野球センスにあふれているとか、運動能力が高いということは見ればすぐわかる。そういう選手もある一定のレベルまで伸びると思うが、もっとスケール大きく、その選手のいいところをどう伸ばすかを考える。
私は能力に10点満点の要素があるとしたら、全部が7点以上であるよりも10のうち三つ10点があり、あとは4とか5の選手の方が伸びる可能性があると思う。「この選手のこの長所はすごい。それを伸ばしたら欠点が全部消えちゃうぞ」と考える。
直すことに一生懸命になるよりも長所を伸ばすことで、能力を容器とすれば、長所の部分の水面が上がり、欠点の部分は水面下に埋まってしまう。つまり、長所が欠点を埋め尽くし、その選手の能力の容器は、水位がより高くなり、容器そのものも大きくしてくれる。選手勧誘の時も、いつも選手のいいところを見ようとしている。
―それが、スケールの大きな選手が育つことにつながるんですね。
鍛治舎 まあ中には、彼はやっぱりダメだったかと、失敗することもありますが(笑)。でも、たとえ結果はダメでも、その選手にとっては、すごく心に残っているようで「監督、僕のいいところをずっと見守ってくれている」と頑張って取り組むようになってくれる。普段から「ここがダメだ」とは言わず「ここがいいんだからそこをもっと伸ばせ」という指導を心がけている。
広島ドラフト1位の佐々木泰(県岐阜商高卒、青山学院大)にしても、些細(ささい)なことは無視してスケール大きく、遠くに飛ばせる良さをさらに伸ばす指導を心がけた。
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注意したのは二つだけ。「ボールを打つな」ということと...