準々決勝
岐阜第一6-5大垣工
岐阜城北6-5大垣日大

 「表情が全く違う」。七回1死一、二塁。岐阜城北秋田和哉監督は、再びマウンドに向かうエース中本陽大に降板前とは、全く違う落ち着きを感じ取った。勢いに乗って自己最速の144キロをマークする力の投球から、スライダーをうまく交えたコンビネーションの投球への変ぼう―。そして、自ら放った同点の2点適時打。秋田監督による大垣日大のエース権田結輝攻略が実った九回裏の逆転サヨナラの源は、「冷静さ」という勝つための最高の武器を手にした「エースの自覚」にあった。

岐阜城北×大垣日大=5回、力投する岐阜城北のエース中本=長良川

■力からコンビネーションへ エース中本、変ぼう遂げた再登板のマウンド

 昨秋は県大会初戦の2回戦で完投しながら、夏の覇者大垣日大に1―3で敗れた中本。春は地区大会で好投しながら、県大会は故障のため一球も投げられず、チームは1回戦で大垣商に2―5で敗れた。

 最後の夏にかけるエースの思いは誰よりも強かった。そして6月、チームで行ったメンタルトレーニングがエースを変えた。

 「ピンチの時は笑顔で、チャンスの時は冷静に」。

 迎えた岐阜大会2回戦。太田陽民の劇的なサヨナラ2ランで第1シード関商工を撃破したが、中本は九回表に4点のリードを守り切れずに降板した。

 準々決勝大垣日大戦。秋のリベンジ、そしてエースとしての自覚。さまざまな思いでマウンドに立つ中本は立ち上がりから自慢のストレートが走り、球速はどんどん上がっていった。

 初回、三者凡退、二回は左前打されたものの盗塁刺殺で3人ずつで切って取り、自己最速の144キロをマークした。

 だが、三回、落とし穴が待っていた。

 まっすぐを捉えられ9番岩本匠叶に左翼越え2ラン。六回にも4番西河遥人に左中間の一番深いところへソロを浴び、さらに1死二塁としたところで降板し、左翼へ退いた。

 亀山優斗、水野蒼太郎の2人の2年生がつないだ後、再びマウンドに向かうエースは、今夏、手にした「冷静さ」を取り戻していた。

 組み立てを変えた。

 勢いのある持ち味のストレートは生かしつつ、スライダーで連続三振を取るなど5人を打ち取り、八回を終えた。

 九回表は先頭に右前打され、味方のエラーもあって2死二、三塁のピンチを迎えたが、落ち着いていた。

 昨夏の岐阜大会で3本塁打の大垣日大3番高川莉玖を狙い通りのスライダーで三振にしとめ、2点差のまま〝サヨナラの城北〟の舞台、九回裏へとつなげた。

■権田攻略実り、再び〝サヨナラの城北〟さく裂

 大垣日大のマウンドは一度、降板したが、同じく再登板したエース権田。

岐阜城北×大垣日大=4回裏、力投する大垣日大のエース権田=長良川

 秋田監督は中本再登板直後の七回から、権田攻略を指示していた。「じっくり待って球数を投げさせ、相手に疲労を蓄積させる」。

 この戦術が最終回に結実する。...