子どもたちと過ごす浅野千通子さん=兵庫県宝塚市

 気が付いたら、くの字に曲がった2両目の車両の中で大勢の人たちの下敷きになっていた―。2005年の尼崎JR脱線事故で重傷を負った兵庫県宝塚市の浅野千通子さん(46)は「真の安全とは何か追求してほしい」との思いで講演を重ね、事故の経験を語ってきた。「負傷後の心身を受け入れ、ゆっくり癒やしてきた。自分自身を大切にすることを伝えたい」と話す。

 05年4月25日、同県西宮市の実家から大阪市へ通勤途中に事故に遭遇。衝撃で飛ばされた体の上に人々が折り重なった。全身10カ所以上を骨折し、左脚の骨が肌を突き破り露出していた。

 「マグマの中にいるような痛み」に耐え、手術とリハビリを繰り返した。06年に仕事に復帰したが治療に専念するため半年後に退職。08年には心的外傷後ストレス障害(PTSD)と重度のうつ病を発症した。精神科病院に入院して一度は回復したかに見えたが、その後双極性障害(そううつ病)を発症した。