アブアムラさんら家族が避難生活を送るテント=3日、ガザ中部デールバラハ(共同)

 イスラエル軍が3月中旬に攻撃を再開したパレスチナ自治区ガザでは、多くの住民が再避難を迫られている。激化する攻撃により、移動中に死亡した人も出た。兄を亡くした男性は「もう神しかすがれない」と疲弊し、住民からは、ガザを実効支配してきたイスラム組織ハマスへの批判も上がっている。

 1月発効の停戦で住民は多少安堵したが、イスラエル軍は攻撃再開に伴い各地で退避通告を出した。中部デールバラハの砂漠地帯ではアブドルムハンマド・アブアムラさん(68)がビニールのテントに避難していた。三男ウダイさん(30)の再避難中の死から立ち直れずにいる。

 攻撃再開を受け、アブアムラさんは家族といた南部からの再避難を決断。3月19日にデールバラハに移った。翌20日、ウダイさんが残りの荷物を取りに最南部ラファに戻った際、戦車からの砲撃で死亡した。近くにいた住民は助かっており「なぜ息子だけが犠牲になったのか」とアブアムラさんは嘆く。「夫が死亡し、一家の柱を失った」。ウダイさんの妻アスマさん(26)は声を絞り出した。