米食品医薬品局(FDA)は10日、新薬の臨床試験前に安全性確認のための動物実験を求めるのをやめ、人工知能(AI)や人の培養細胞を利用した代替技術に置き換えていく方針を発表した。一部の抗体薬で先行して始める計画。犠牲を減らして「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を進めるとともに、新薬開発にかかる時間やコストも低減できると説明している。
年内に関係機関を集めて情報収集のための会合を開催。製薬企業が代替技術で質の高い安全性データを提出した場合は、優先的に審査する仕組みをつくるほか、データの評価法の開発も促す。各国の規制機関の参考にもなるような試験方法の確立を目指す。
FDAによると、抗体医薬の開発には1千億円前後の費用と10年近い時間がかかる。安全性の確認に動物実験データを求めているが、1〜6カ月間のサルの実験で安全と確認された薬が人では有害だった例があり、動物実験がどこまで有効なのかを疑う声が出ている。
FDAが代わりに有望視するのは、AIで薬の体内分布や副作用を予測する技術だ。