豊胸用の薬剤の特許を侵害されたとして、医療機器販売会社「東海医科」(東京都中央区)が都内の美容クリニックの医師に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁は19日、特許侵害には当たらないとした一審東京地裁判決を取り消し、医師に約1500万円の賠償を命じた。特許法は医師らが調剤した医薬品には免責規定を設けているが、美容目的は対象外とした。

 東海医科が特許権を有するのは患者の血漿や細胞の増殖を促す成分を混ぜた薬剤の発明。同社は医師が同様の薬剤を用いて豊胸手術をしたと主張した。採血などの医療行為を伴う調剤が、特許侵害に当たるのか否かが争点だった。

 本多知成裁判長は判決で、豊胸手術は主に美容目的で行われ、社会通念に照らし、今回問題となった薬剤は「病気の治療や予防のために使用するもの」とは言えないと指摘。また「医療技術の発展には製薬産業などの研究開発の寄与が大きい」と判断した。

 知財高裁は今回の訴訟で、専門家らから意見を募る「第三者意見募集」制度を活用し、裁判官5人の大合議で審理した。