2011年3月の東京電力福島第1原発事故を巡り旧経営陣が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は、「事故の予見可能性はなかった」として、検察官役の指定弁護士側の上告を棄却する決定をした。5日付。原子力部門のトップを務めていた武黒一郎元副社長(78)と、ナンバー2だった武藤栄元副社長(74)の無罪が確定する。裁判官3人全員一致の結論。
共に起訴され、昨年10月に死去した勝俣恒久元会長=当時(84)=は公訴棄却となっていた。
第2小法廷は国の地震予測「長期評価」について「10メートルを超える津波が襲来するという現実的な可能性を認識させるような情報だったとまでは認められない」と指摘。3人は事故を予見できなかったとする19年9月の一審東京地裁判決と、23年1月の二審東京高裁判決を支持した。
3人は検察が不起訴としたが、市民で構成する検察審査会の議決に基づき、双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら44人を死亡させるなどしたとして、16年2月に強制起訴された。