脳神経外科医 吉村紳一氏
こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回も「開頭手術」の詳細についてお話しします。
皮膚を切った後、骨の一部を開けます。そう聞いただけで、怖くなってしまうかもしれません。しかし私たちの脳はとても軟らかく、硬い骨で守られているので、骨を開けないことには手術が出来ないのです。では、どうやって開けるのでしょうか?
頭の骨は5ミリから1センチ程度の厚みがあるので、まずドリルで穴を開けます。と言っても工事現場のドリルとは違います。脳専用のドリルで、骨を通り抜けるとクラッチのような原理でドリルの先端が回らなくなり、脳を傷つけない安全システムが備わっているのです。すごいですね!
さて骨に何カ所かドリルで穴を開けたら、その穴をつなぐように骨を切ります。そうすると骨の一部が外れます。その骨は、手術が終わったら元に戻します。どうやって固定するのでしょうか?
チタン製のプレートで穴をふさぎつつ骨を固定するのです。このプレートはとても薄く出来ており、固定用のネジの頭も平たく設計されていますので、固定後も出っぱりがほとんどありません。また、骨を切る時に出来た溝は、骨の粉や人工骨でふさぎ、そこさえも手術後にへこみが出来ないように配慮します。
このように徹底的に美容的な配慮をすることで、術後に傷が分からなくなるのです。自分の患者さんにも、「えーっと、どちら側の手術でしたか?」とお尋ねすることがあるほどです。安全かつ美容的な手術を目指して、開頭手術も日々進歩しているのです。
(兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)