練習でノックする立木啓太さん=大垣市中川町、大垣北高校

 肩書こそマネジャーだが、高校野球ではあまりなじみのない「学生コーチ」という役割だ。大垣北高校(大垣市中川町)硬式野球部の3年立木啓太さんはノッカーや打撃投手を務め、選手にアドバイスもする。チームを強化する欠かせない存在として、ナインを支えている。

 「試合で捕れていなかった打球を思い出しながら打っている」。投内連係の練習。ジャージー姿でバットを振って、ノックを繰り出す。ゴロに強弱をつけ、一球一球に思いを込める。

 小学3年で野球を始め、中学まで外野手としてプレー。大垣東中学校では軟式の県大会で優勝を味わった。それでも「僕自身は野球がうまくなかった」。高校では最初からマネジャーとして入部した。

 入学当初は、他の女子マネジャーと同じ仕事だった。自主練習で仲間に頼まれてノックを打っているうちに、新たな道が開けた。近藤健二監督に打ち方を教わり、ネットに向かって自主練習にも励んで、上達していった。

 昨年5月の誕生日には同級生からノックバットをプレゼントされた。新チームとなった昨秋からは全体練習でも任され、今春の大会では試合前のノックも担った。立木さんは「他の選手がうまくなったと評価されると、自分のノックがよかったと解釈している」と、やりがいを実感する瞬間を語った。

 試合に出てプレーしたい思いは「全くない。みんなの方がうまいので」ときっぱり。「野球が好き。みんなが頼ってくれる」。真っすぐな思いが原動力だ。同学年の中村翔選手は「何でも手伝ってくれる。もともと野球をやっていたので、アドバイスもしてくれる」と感謝する。甲子園に見学に行き、ブルペンや試合前のノック動画をつくり、仲間に送ったこともある。

 黒子に徹する日々。「視野は広がったと思う。小さいことばかり気にしている」と、立木さんは打ち明けた。近藤監督は「プレーイングマネジャーは主将だが、もう一人の主将。組織を陰で支えている」と目を細める。

 今夏の全国高校野球選手権岐阜大会は7月8日に開幕する。1カ月後に迫る集大成の舞台。「最後まで仕事をやりきりたい。それに尽きる」。きゅっと口元を引き締め、仲間と共に準備を進める。