昨年の東海ダービー馬、カツゲキキトキト(牡4歳、錦見勇夫厩舎)が敗れた。15日・笠松競馬の重賞「くろゆり賞」(1600メートル、SPⅠ)は、同じ名古屋のヴェリイブライト(牡7歳、川西毅厩舎)が、ハナ差でカツゲキキトキトを破る金星を挙げた。笠松勢は先行したハイジャ(牡4歳、井上孝彦厩舎)が3着に粘り込んだ。
カツゲキキトキトは、もともと笠松育ち(柴田高志厩舎)で新馬戦を勝利。名古屋に転厩したが、笠松のファンも多く、くろゆり賞では単勝1.3倍と圧倒的な人気を集めた。地方馬限定では落とせない一戦だったが、休養明けで本調子とはいえずに惜敗した。それでも、キトキトファンの一人として、笠松を復帰戦に選んでくれたことがうれしかった。「旅に出た愛馬が成長し、帰郷して雄姿を見せてくれた」ようで、懸命な走りは見せ場たっぷりだった。
これまで重賞10勝。地方競馬のエース的存在だが、4月末のオグリキャップ記念制覇後は、骨膜炎による脚部不安で3カ月半のブランクがあった。追い切りの動きが今一つで、無理はさせられず、何となく負けそうな空気も漂っていた。オグリキャップ記念では逃げ切ったが、今回は後方から追い上げる展開で、ぎこちないレースぶりとなり、ゴール前の末脚が鈍った。次走は9月13日の東京記念(大井、SⅡ)が視野に入っており、復活勝利を期待。大畑雅章騎手の騎乗が続くが、厩舎後輩の木之前葵騎手(キトキトで5勝)の騎乗もまた見てみたい。
勝ったヴェリイブライトに騎乗したのは、若手の加藤聡一騎手(名古屋)で、重賞初制覇となった。3番手を進み、4コーナーからカツゲキキトキトとのマッチレースになり、ゴール前での一伸びが光った。「びっくりしていますし、うれしいです。力がある馬で追い切りの動きも良かった。最後はキトキトに負けたかなあと思ったが、『勝ってる』と聞いて...」とにっこり。デビューした昨年は初騎乗初勝利など56勝を挙げ、日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリの優秀新人騎手賞に輝いた。今年はくろゆり賞制覇で40勝目となり、「2年目で100勝も近いので、精進して頑張っていきたい」と意欲を見せた。
笠松勢では、ハイジャが好ダッシュから軽快に先行。最後は名古屋の2頭にかわされたが、ゴール前でも粘りを見せて馬券圏内には絡んでくれた。でら馬スプリントを勝った時のように、2番手から抜け出す形が理想だったが、先頭で目標にされ、距離もやや長かったようだ。
この日は、雨が降ったりやんだりだったが、お盆休みで大勢のファンが詰め掛け、入場者は普段の3倍近い2300人。イベントが多く、若いファンや家族連れの姿も目立った。ばん馬(ばんえい十勝)が来場し、ファンを背中に乗せたりして、ふれあいの場になった。北海道の物産展もあり、にぎわった。
正門横にある競馬新聞販売所の前では、普段とは違った光景も...。笠松、名古屋競馬を中心に競馬タレントとして活躍している神田舞さんが、専門紙「競馬エース」の販売を手伝った。HPで「取材日記」を公開しており、くろゆり賞のパドック解説にも登場した。笠松でのイベント参加は初めてということで大張り切り。オールドファンや若者たちと歓談しながら、場内の雰囲気を盛り上げていた。「(名古屋の時より)笠松の方がお客さんが多いです」と専門紙の販売も上々だったようで、「彼女が200~300部は売った」とか。
くろゆり賞後、盛岡ではクラスターカップ(JpnⅢ)が開催された。4年前にラブミーチャンが、戸崎圭太騎手で制覇したレースで、今年は笠松の8歳牝馬タッチデュールが参戦。3年前のくろゆり賞優勝馬だが、各地の重賞を元気に転戦する日々。この日は、JRAの藤田菜七子騎手が騎乗したこともあって、馬の実力以上の単勝6番人気。JRAオープン馬のタイセイファントムを上回る人気ぶりに、笠松のファンからは驚きの声も。7月の盛岡・マーキュリーカップ(JpnⅢ)では、佐藤友則騎手でも14番人気だったが...。
地方競馬での菜七子フィーバーは健在。「タッチデュール&藤田菜七子」が印字された単複のがんばれ・記念馬券を笠松場外で買ってみたが、結果は「やっぱりなあ」の12着に終わった。菜七子騎手は、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)盛岡ラウンドにも参戦。1着と3着でJAR東日本のトップに立った。
YJSといえば、笠松の新人・渡辺竜也騎手が現在、地方競馬西日本地区のトップを快走中。5月の笠松ラウンドでは1着、6着と好走。8月22日には、ファイナルラウンド進出を懸けて、金沢でのラスト2戦に挑戦する。もちろん勝ちにいくだろうが、ともに5、6着以内に入れば、ファイナルに大きく前進する。笠松でくろゆり賞を勝って波に乗る加藤騎手も、2位の好位置で金沢参戦予定。ポイント上位3人がファイナルへの夢切符をゲットする。笠松、名古屋から年末の大井、中山競馬場へ。17歳・渡辺騎手、21歳・加藤騎手の奮闘ぶりに注目していきたい。