真夏の金沢競馬場。笠松、名古屋のデビュー1、2年目の騎手が騎乗した2頭が力強く抜け出して、鮮やかなワンツーフィニッシュを決めてくれた。
地方、中央競馬の若手騎手が腕を競う「ヤングジョッキーズシリーズ」のトライアルラウンド金沢。笠松競馬の17歳新人・渡辺竜也騎手がシリーズ2勝目を飾って、高らかにVサイン。年末のファイナルラウンドとなる大井、中山競馬場への切符をほぼ手中にした。
8月22日、レース観戦に訪れた金沢競馬場。入場門を抜けると、競馬新聞が4紙も売られており、威勢のよい掛け声が聞こえてきた。売り場のおばちゃんに「見慣れないやつ」と思われたのか、「どこから来たの」と聞かれ、「笠松から。若い騎手が出るからねえ」と応援団の気分。現地で買おうと決めていた競馬新聞は600円とやや高かったが、冊子形式になっていて開きやすかった。
西日本地区5戦目となる金沢ラウンド。騎乗馬のくじ運にも恵まれた渡辺騎手は、第1戦(7R)を1番人気コウユウカゲムシャで勝利。第2戦(9R)は8着だったが、地方勢のトップ(得点率)をキープ。ファイナルラウンド進出へ大きく前進した。渡辺騎手は予定の4レース騎乗を終え、残る開催は園田のみとなった。東西のファイナル進出騎手(地方、中央各7人)は11月22日に正式発表される。
4月にデビューしたばかりの渡辺騎手は「持ち前の明るさで周りの人を楽しませ、レースでは勝負強さを見せたい」とアピールしていた。5月の笠松ラウンド初戦をいきなり勝利し、金沢でも快進撃はノンストップ。両競馬場での連続勝利でポイントを稼ぎ、地方、中央騎手46人の全体でも、何とトップに立っている。
金沢での1レース目。渡辺騎手のコウユウカゲムシャが3コーナーで2番手に上がると、ラスト200メートルでは、名古屋・加藤聡一騎手騎乗の7番人気ベルウッドレオーネを追って猛スパート。ゴール直前で差し切り、半馬身先着した。おかげさまで、最後の直線では絶叫できたし、買っていた応援馬券(単勝、馬連)も的中。東海勢のファンとしては痛快だった。
笠松の先輩騎手たちからも「頑張ってこい」と活躍を後押しされていた。渡辺騎手が金沢で騎乗するのは、この日が2度目。7月の重賞・金沢スプリントカップではマイネルボールドで5着と健闘。「先生(笹野博司調教師)に走れるチャンスを頂け、金沢で一度乗った経験が生かせた」という。金沢スプリントカップをライスエイトで勝った池田敏樹騎手からも、金沢コースでの乗り方のアドバイスを受け、好騎乗につなげた。
表彰式では、2戦目をソリッドボートで逃げ切った塚本雄大騎手(高知)と一緒にガッツポーズを決め、笑顔がはじけた。渡辺騎手は「内ラチ沿いがいいと聞いていたので、先行馬の後ろでいいポジションが取れた。スルスルと上がっていけて手応え通りによく伸びてくれ、勝てると思った」。ゴール前では、加藤騎手とのマッチレースとなったが、「レース前からリラックスして、落ち着いて乗れた」と大舞台に強いタイプのようだ。表彰式後には、小さな子にも「渡辺さん、サインお願いします」とせがまれる人気ぶりで、うれしそうだった。
出身地の千葉からは両親も駆け付けてくれ、ゴール前では「キャー」とかの歓声が聞こえたという。レース後には「良かったなあ」と一言。笠松にもよく応援に来てくれるそうで、この日は金沢で一緒に宿泊し、勝利を祝った。
笠松、金沢での計4戦を振り返って、「笠松での勝利はデビュー2勝目でもあり、すごくうれしかった。金沢の1戦目はいい馬に乗せてもらった。2戦目は4コーナーで外を回り過ぎて、思ったようなレースができず悔しかった。今後こういうチャンスがまたあれば、勝っていきたい。地方とは違って、JRAの騎手のシビアな進路の取り方なども勉強になった」という。
渡辺騎手は、金沢での初勝利で計19勝目となった。笠松ではまだ2着(32回)が多く、勝ち切れない甘さはあるが、積極的な先行策も目立つ。まずは順調なジョッキー人生をスタートさせたといえよう。デビューした時からの目標でもある「ファイナルラウンドで優勝」という大きな夢に向かって、前に一歩進んだ。