ゆずを丸ごと使った銘菓「丸柚餅子」で知られる石川県輪島市の老舗和菓子店「中浦屋」が、市内に新たに工房を設け、社長自ら和菓子を手作りし復興のため奮闘している。店は能登半島地震で焼失や地割れなどの大きな被害を受けたが、社長の中浦政克さん(61)は「目の前のできることを積み重ねていくだけ」と前を向く。
3月中旬の午前6時半。輪島市マリンタウンの物産館「海の駅・六銘館」にある工房に、中浦さんとスタッフ、学生ボランティア計6人が集まった。この日作るのは同店の人気商品「えがらまんじゅう」。塩味のある生地と甘いこしあんの組み合わせが絶妙で、もち米のつぶつぶ食感が評判だ。
震災前は機械で製造していたが、工房が被災し、今は全工程を手作業に切り替えた。社長らはこしあんを白い生地で手際よく包み、黄色に色づいたもち米を敷き詰めて蒸し上げた。原材料のもち米や塩などを能登産に変え、味や食感がより良くなったという。